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第1章
第8話 ニートと武器屋と魔王の娘
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宿屋の三階へ移動する途中、二階へ立ち寄ったニートは遠くで男の声が聞こえた気がし、そちらへ向かっていた。
二階の廊下を進むと、その声は魔王の娘と会話をしていることがわかった。
ニートは男と魔王の娘の声がする客室の扉の前で立ち止まると、室内の会話に聞き耳を立てた。
ー「魔王の娘だぁ!?お嬢ちゃんがかい?」ー
魔王の娘と武器屋の会話の一部始終を聞いたニートは、国王と王立魔法教会、魔王の関係性を知り驚きのあまり立ち尽くしていた。
そして、魔王の娘の境遇を聞いた彼の胸はモヤモヤしていたのだった。
ガチャン
扉の開く音が客室に響いた。
「あ!ニートくん!」
扉を振り向いた魔王の娘は、ニートを見つけ、彼に手を振った。
「おお、お前がニートって奴か。俺は武器屋だ。よろしくな」
自己紹介した武器屋に、ニートも「はじめまして……」と応えた。
「お嬢ちゃんから話は聞かせてもらった。ニート、お前はお嬢ちゃんに協力するつもりなのか?」
不意打ちな武器屋の質問に、ニートは言葉を詰まらせた。
「ああ、えっと……実は……」
ニートは二人の会話の一部始終を立ち聞きしてしまったことを謝罪し、彼自身の気持ちを語った。
「魔王の娘には協力者が必要だと思うよ。……その、できればボクも……協力してあげたい……けど、何もできないし……ニートだし……」
武器屋は黙ってニートの話を聞いている。
「誰か他にも協力者がいたら……と思って、魔王の娘を泊めるついでに宿屋に誰かいないか、こうして探していたんだけど……」
「そうだ!ニート!その、村人が誰もいなくなったって本当なんだな?俺は昨夜からここに泊まっていて、ちょうどお嬢ちゃんが来たところで起きたからな……村の様子がわからないんだ」
ニートの話を遮った武器屋は、魔法村から人がいなくなった現状を先程まで知らなかったようだ。
「村の様子は魔王の娘が言った通りだよ。臭気に毒された人たちは働く気力を失うから、皆どこかへ隠れてしまったのかもしれない。……ボクはニートだから効かなかったみたいだけど……」
ニートの言葉に武器屋は「ははははっ!……お前、ニートで良かったなあ!」と、陽気に笑った。
「も……もしかしたら、ボクには臭気が効かないということだけは、何かしらの役に立てるかもしれない!……のかな……?だから、魔王の娘に協力しようと思う……村もこのままだと困るし……」
ニートの決断に武器屋は笑顔になった。
「よし、そういうことなら俺も協力しよう!俺の本業は魔法使い専門の武器屋だからな。お嬢ちゃんのために最強の武器を作ってやる。腕が鳴るってもんよ!」
「ええ~!武器屋さんも協力してくれるの!?やったー!」
珍しく静かに二人の会話を見守っていた魔王の娘は、武器屋の協力に大喜びした。
「それから、ニート。お前は何も持っていないようだからな、防具とかやるぜ?」
「……ちょっ!!!!ちょっと待って!?えっ?二人とも!武器って必要!?防具って何に使うの!?」
どんどん話を進めていく武器屋に着いていけないニートは、驚きと焦りで尻込みした。
「ああ、まあ、ニート。お前はニートだからわからないかもしれないが、これは冒険なんだよ。未知のものと戦うってことだ。使う使わないは置いておいて、武器や防具、装飾品なんかも用意しておくに越したことはないんだぜ。魔法村の皆はそうやって働いてるんだ」
「そうだよ!魔法使いの仕事に協力するって、そういうことなんだよ!」
二人の「当然!」というような態度に圧倒されたニートは、「自分は選択を間違えてしまったのだろうか」と後悔したが、冒険に向けて楽しそうに計画を始めだした二人の様子を見る限り、全ては後の祭りであることを悟ったのであった。
二階の廊下を進むと、その声は魔王の娘と会話をしていることがわかった。
ニートは男と魔王の娘の声がする客室の扉の前で立ち止まると、室内の会話に聞き耳を立てた。
ー「魔王の娘だぁ!?お嬢ちゃんがかい?」ー
魔王の娘と武器屋の会話の一部始終を聞いたニートは、国王と王立魔法教会、魔王の関係性を知り驚きのあまり立ち尽くしていた。
そして、魔王の娘の境遇を聞いた彼の胸はモヤモヤしていたのだった。
ガチャン
扉の開く音が客室に響いた。
「あ!ニートくん!」
扉を振り向いた魔王の娘は、ニートを見つけ、彼に手を振った。
「おお、お前がニートって奴か。俺は武器屋だ。よろしくな」
自己紹介した武器屋に、ニートも「はじめまして……」と応えた。
「お嬢ちゃんから話は聞かせてもらった。ニート、お前はお嬢ちゃんに協力するつもりなのか?」
不意打ちな武器屋の質問に、ニートは言葉を詰まらせた。
「ああ、えっと……実は……」
ニートは二人の会話の一部始終を立ち聞きしてしまったことを謝罪し、彼自身の気持ちを語った。
「魔王の娘には協力者が必要だと思うよ。……その、できればボクも……協力してあげたい……けど、何もできないし……ニートだし……」
武器屋は黙ってニートの話を聞いている。
「誰か他にも協力者がいたら……と思って、魔王の娘を泊めるついでに宿屋に誰かいないか、こうして探していたんだけど……」
「そうだ!ニート!その、村人が誰もいなくなったって本当なんだな?俺は昨夜からここに泊まっていて、ちょうどお嬢ちゃんが来たところで起きたからな……村の様子がわからないんだ」
ニートの話を遮った武器屋は、魔法村から人がいなくなった現状を先程まで知らなかったようだ。
「村の様子は魔王の娘が言った通りだよ。臭気に毒された人たちは働く気力を失うから、皆どこかへ隠れてしまったのかもしれない。……ボクはニートだから効かなかったみたいだけど……」
ニートの言葉に武器屋は「ははははっ!……お前、ニートで良かったなあ!」と、陽気に笑った。
「も……もしかしたら、ボクには臭気が効かないということだけは、何かしらの役に立てるかもしれない!……のかな……?だから、魔王の娘に協力しようと思う……村もこのままだと困るし……」
ニートの決断に武器屋は笑顔になった。
「よし、そういうことなら俺も協力しよう!俺の本業は魔法使い専門の武器屋だからな。お嬢ちゃんのために最強の武器を作ってやる。腕が鳴るってもんよ!」
「ええ~!武器屋さんも協力してくれるの!?やったー!」
珍しく静かに二人の会話を見守っていた魔王の娘は、武器屋の協力に大喜びした。
「それから、ニート。お前は何も持っていないようだからな、防具とかやるぜ?」
「……ちょっ!!!!ちょっと待って!?えっ?二人とも!武器って必要!?防具って何に使うの!?」
どんどん話を進めていく武器屋に着いていけないニートは、驚きと焦りで尻込みした。
「ああ、まあ、ニート。お前はニートだからわからないかもしれないが、これは冒険なんだよ。未知のものと戦うってことだ。使う使わないは置いておいて、武器や防具、装飾品なんかも用意しておくに越したことはないんだぜ。魔法村の皆はそうやって働いてるんだ」
「そうだよ!魔法使いの仕事に協力するって、そういうことなんだよ!」
二人の「当然!」というような態度に圧倒されたニートは、「自分は選択を間違えてしまったのだろうか」と後悔したが、冒険に向けて楽しそうに計画を始めだした二人の様子を見る限り、全ては後の祭りであることを悟ったのであった。
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