雨のち晴れ

朔羅那弥

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試作品

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真剣に薬剤の調合に向き合っていると、
肩を叩かれる。

「なに?どうした?」
「どうしたじゃないよ。教授から内線。何度鳴ってる。」
「えっ?マジか。ごめん。」
「お前の集中力は知ってるから、いいけどさ。何回も来るから急用じゃないかなと思ってさ。」
「ありがとう、葛城」

一度集中すると周りの音が一切遮断されてしまう。何も聞こえなくなる。
一旦、作業場から離れて、教授のとこへ
電話をかける。

「遅いよ!椎名君!待ちくたびれたよ!」

数秒で出た教授は、不貞腐れた声を出す。

「…教授。声が大きいです。すみません。試作品に集中してたもので。」
「君の集中力は知ってるから、内線を鳴らしたんだよ!優秀な社員がいて良かったね!」
「そうですね。理解者が近くに居てよかったです。話はなんですか。」

社員を褒められるのは素直に嬉しい。

「あっ、そうそう。日時と場所は未定なんだけど、神宮寺グループの社内研修に呼ばれたから、椎名君も助手として来てね。」

軽口で重要なことを伝えてくる

「教授。それはもしかして、例の件での研修でしょうか。」
「そうとも言う~」
「なら、きょ「拒否権は無いよ。君の営業もあるし、君のことは僕が守るし、不安なら葛城君も連れてきてもいいから。」

強く肯定してくる時の教授は、何を言っても意見を変えない。仕方なく、

「分かりました。日程が決まったら、連絡ください。空けるようにします。」

そう返事をして、電話を切る。
自分のデスクで仕事をしている葛城に、

「葛城、神宮寺グループでの研修が近いうちに入るから、葛城も同伴してくる?」

教授からの話を伝える

「うん、了解。詳しく日程が来たら教えてくれ」
「ありがとう。葛城」
「教授が強気なときは、断れないだろ?」
「そうなんだよ。ってか、断るというの選択肢がないんだよね。」
「確かに!」

笑っている葛城に釣られて笑う。

そういえば教授が守るって言ってたっけ。じゃ、αが多いってことか。
油断大敵ってことか…。

「…葛城、同伴時、なるべく傍にいてくれよ。」
「??なるほど。了解。」

αが多いということは、α社会で生きてきた人が多い。Ωを劣等種として見下げることが多いだろう。

はぁ、やる前から気が滅入りそうだ…..。
教授だけでならないかなー。

どうにもならないことを思いながら、
また試作品作りに戻るのだった。
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