雨のち晴れ

朔羅那弥

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研究所

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大学に着けば、教授と研究者の間柄になる。

-駐車場

「じゃ、教授、またあとで、そっちの研究室に行きますから。」

シートベルトを外し、外へと出る。

「了解ー。あっ、フェロモン抑制剤の結果を持ってきてね。ゼミ生にも話すからさ。」
「分かりました。まとめたものを持参します。」

そう返事をして、自分の研究所へ向かう。

研究所の入口に入ると、
着替えていた葛城がいた。

「おはよう、椎名。時間通りで。」
「おはよう、葛城。お前もな。」

軽く挨拶をして、自分の席へ向かう。
PCをたちあげると、新しいデータも届いていた。

-やっぱり、フェロモン抑制剤が合う人は発情期ヒート抑制剤だと副作用が出るな。この二つを合わせるの厳しい…。

「椎名?」
「うん?何?」

PCから目を離さずに返事をすると、

「教授から内線1番」
「了解。」

「椎名です。」
「仙城だよ。急なんだけど、今日の講義、手伝ってくれない?」
「はい?なんでですか。研究データと試作品を作らないといけないんですが。」
「今日の講義の内容がさ、君の研究データも使うし、君の授業を受けたい生徒も多いんだよー。」
「知りませんよ。そんなこと。授業に当てる時間がないです。」
「そこを頼むよー。一コマだけだし。」
「大学の講義までは受け入れてませんので。」

まだ電話口で話しているが、電話を切る

「教授に強気になれるのはお前位だよな」

会話の内容である程度予想していたのか、葛城が笑っていた。

「人遣いが荒いっての。単に講義がめんどくさいだけだろ。教授の場合は。」
「外部講演には、助手として行くのに。」
「それは、営業も兼ねてるから。」

葛城と雑談をしながら、データをまとめ、葛城宛に送信する。

「送ったデータと多分別の医療機関からのデータも来ているから、まとめて置いて。試作品を作って、量産できるとこへ持っていかなきゃいけないし。」
「OK。試作品のデータも送ってくれよ。」
「了解」

互いに得意分野が違う為、分担して対応している。二人でやり取りしていると、

「おはようございます!」
「おはよう、田中君」
「おはよう、田中」

元気よく入ってきたのは、教授のところから就職してくれた田中はじめ君だ。

「今日は、試作品の分量のデータをまとめて」
「分かりました。発情期ヒート抑制剤とフェロモン抑制剤の両方ですか?」
「両方で」
「分かりました!」

明るくて元気な田中君は、見た目に反して真面目で研究熱心だ。

Ωである俺でも、気にしないで気さくに話してくれる。

-ホント、人には恵まれている。この環境だけは奪われたくないなー。

居心地良さを感じながら、試作品作りを再開する。

これを待っている人達のために。
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