雨のち晴れ

朔羅那弥

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帰り道

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資料を持って、学科長室を出る。

-戻ったら、フェロモン抑制剤の方のデータをまとめるか


Ωの体質によって、俺の作っている抑制剤でも副作用が出る人が稀にいる。
その人達用に、別のものを考えたのがフェロモン抑制剤だ。こっちだと副作用が出た人には良かったのだ。

-全部抑えられたら、一番なんだけどな。

頭の中で考えている間に、研究所に着く。
扉を開けると、帰り支度をしている葛城がいた。

「遅かったな。大丈夫だったか?」
「おぅ、何とかなった……?」
「何だよ。その言い方、ダメだったのか?」
「なんていうか、一旦仕切り直しにはなったけどさ。相手がさ……。」
「何?迫られた?」
「何笑ってんだよ。押しが強かったんだよな。あと胡散臭い感じがした。」
「ふーん、まぁ、次から教授が対応してくれるンじゃね?」
「…ここにも来たいって言われたんだよな…」
「お前な…。まぁ、その時は俺が対応してやるよ。」
「助かる。葛城は帰るのか?」
「今日の分は終わったから、帰るよ。お前は?」
「もう少ししたら、帰る。帰らないとまた教授に怒られるし。」
「無理するなよー!また明日。」

さっさと帰ると葛城を見送り、自分の席に着き、データを確認していく。

今日の分として仕事を終える。
データもきちんと保存しておく。

帰る支度をして、研究所を施錠する。

帰り道にあるコンビニに寄る。軽く食べれるものを買おうとしていると、

「椎名さん??」

誰かに呼ばれた。声の方を向くと、

「…小鳥遊さん??」
「やはり、椎名さんでしたか。お疲れ様です。買い物ですか?」

ニコッと笑いながら、近寄ってくる小鳥遊さん。距離感が近い感じがして、苦手なんだよな。

「…そんなところです。小鳥遊さんは何故ここに?」
「あぁ、従兄弟が近くに住んでまして、そこへのちょっとした土産を買いに来てました」
「そうなんですか。お先に失礼します。」
「そんなに怯えないで下さいよ。何もしませんよ。」
「いや、慣れないだけですから、気にしないで下さい。」

何とか離れたいが、なかなか離れてくれない小鳥遊さん。

「何かあるなら、さっさと話して貰えませんか。」
「潔いですね。単刀直入にお聞きしますが、椎名さんはΩですか?」

急に小さい声で確認してくる当り、まだ常識人だなと思いつつも、答える

「そうですが、何か?」
「いえ、ありがとうございます。大変苦労されたんですね。」
「私自身何もしてません。もっと大変な方々がいますし。」
「そんなことありませんよ。でも、今日はこの辺で失礼します。」

目的の物があったのか、さっさと行ってしまった。

小鳥遊さんも厄介な人かもしれないと思いながら、自分もレジに行く。

今日一日でどっと疲れた……、

蓮さんとこにいこうかな……。

自分の話を聞いてくれるだろう、
もう1人の身内のとこへ、向かう。
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