雨のち晴れ

朔羅那弥

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出会い2

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進級と同時に、研究を続けたことにより、
俺の噂は別のものへと変わっていった。

研究が評価され始め、スポンサーが一気に付いたことで、一目置かれるようになった。

入学当時を知らない後輩達は、αだと思うようになり、先輩達はゴマをするようになった。

周りの態度に疲れた俺は益々研究に没頭した。時には家にも帰らない日々もあり、食事も取らないことも増えて、研究室で倒れたことで、とうとう教授から怒られたのだ。

「君ね!気持ちはわからなくないが、倒れるまでやっていいとは言ってないよ!」
「…すみませんでした。」
「全く。君の両親に顔向け出来ないよ……。君のことを預かる身としてはね。」
「…教授が拾ってくれただけで、両親は感謝してますよ。」
「…ホント、君は数奇な人生を送ってるね。
父君はどうしてるんだい?」
「…聞きます?母が出ていってから、精神を病んで、Ω専用の精神病院に入院中です。もうダメかもしれないらしいです。」
「ホント、君の両親は運命に翻弄されてしまったんだね。」
「…両親を助けたくて、やってる研究だったのに、間に合わなかったですね……。」

保健室で横になりながら、愚痴ってしまう。

仙城教授は、唯一本音を話せる大人で、第二の親みたいな伯父である…。

「……透、研究はやめてもいいんだよ?君を助けたくてここに呼んだけど、こんな風にする為にやらせた訳でもない。弟夫夫のことだって、君が責任を感じることでもないよ。」
琉生るい伯父さん……。俺、わかんない。」
「透、これだけは言っておくよ。君の人生だ。どの選択肢を選んだとしても、間違いじゃない。」
「……俺は、「椎名!倒れたって!大丈夫か!」

俺の話を遮るように保健室に入ってきたのは葛城だった。
慌ててきたのか、汗だくな葛城を見て、笑ってしまう。

「あはは!急ぎすぎだろ。葛城。」
「笑い事じゃない!心配したんだぞ!」
「君たち、ここ一応保健室なんだから、静かに話そうか?」

保健医の新野にいのさんが注意してくる。

「まぁ、それだけ騒げるんだから、とりあえずは大丈夫そうだね。椎名。ここ何日も食べてなかったろ?研究するのもいいが、栄養をしっかり取って休むことも大事なことだぞ。」

倒れた原因を言われ、ぐうの音もでない。

「仙城教授も、自分の受け持ちの生徒をこんな風になるまで放置しないようにしないで下さいよ。ブラックゼミとか言われますよ。」
「肝に銘じておきますよ。さて、椎名君は大丈夫かい?もう少し休んでから、葛城君に送ってもらいなさい。」
「えっ、一人で「送るに決まってるだろ!また倒れたらどうする!」
「そういうことだ。素直に送ってもらいな。じゃ、あと少し休みなさい」

教授、葛城、新野さんに言われたら何も言えず、そのまま布団を引っ張り、ふて寝する。三人の笑い声が聞こえたが、無視した。
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