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番外編② (5)

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 最後に見た時よりも白髪の増えて老けが進んだ男は、パリッと糊の張ったスーツを着こなし、年齢にそぐわぬ姿勢の良さで複数人の部下を引き連れ大所帯の中央に佇んでいた。

 圧倒的存在感を放つ男が、昔の結菜は苦手で、嫌いで、怖かった。
 病院長という肩書きに常に相応しい行動をする男は、公私混同しない質の人間であり、誰よりも何よりも体面を気にしする男であった。

「お久しぶりです、病院長」

 結菜が彼のことを父と呼ばなくなったのはいつのことであっただろうか。
 結菜はふとそんなことを考えながら、血の繋がらない父親ににっこりと微笑みを向ける。そんな結菜に対して、男はただただ淡々とした表情で結菜のことを見下ろしていた。

「………帰るぞ。祝言の準備は既に整っている」
「お断りいたします。わたしの夫は身体が大変弱いので」

 結菜の言葉に、男は眉を顰めた。

「そんな男と結婚させるわけがないだろう。お前には双葉の人間として相応しい、」
「笑わせないでください」

 ピシャリと言葉を叩きつけた結菜は、ここ数年で精神的にとても強くなった。
 だからこそ思う。

(どうしてわたしは、こんな男の言いなりになっていたのでしょうか)

 確かに見た目の態度は大きいし、彼には威厳のような風格も存在している。
 けれど、今の結菜からするとそこまで怖がる必要性を感じられなかったのだ。

「———ずっとずっとわたしを“双葉”として扱ってこなかったくせに、政略結婚の駒として使えそうになった瞬間に“双葉”として扱う?笑止千万。寝言は寝てから言ってください。わたしが“双葉”として相応しくない行動をしても関係ありません。だって、先にわたしを“双葉”ではないと切り捨てたのはあなたなのですから」

 結菜の冷たい表情に、男は呆然としていた。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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