完 1週間だけ、わたしの彼氏になっていただけませんか? (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛

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番外編② (4)

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 市役所の待合で唯斗の用意していた婚姻届に目を見開いた結菜は、けれど次の瞬間くしゃっと泣きそうに笑った。

(本当に不器用な人)

 四つ葉と桜の描かれた婚姻届。
 四つ葉は結菜と陽翔の揃いのピアスのデザインで、桜は結菜と唯斗が疎遠になってからも必ず行っていたお花見を表しているものだろう。

 自分の名前等の情報を書き込む箇所以外は、全て既に書き込まれていた。
 陽翔の几帳面でいて優しさの感じられる文字を、唯斗のチャラく見えるけれど全てにおいてお手本のような気の抜けなさが潜んでいる文字を、主治医である小鳥遊の丸みを帯びた愛らしい文字を、結菜は慈しむように撫でてから自らの流麗だと評される流れるような文字を綴る。

 婚姻届の未記入箇所はあっという間に消えていく。

 1つの欄が埋まるたびに、陽翔との苦労に満ちながらも幸せに満ちた生活が、唯斗に嫌われたとさびしい思いをしながら過ごした日々が、大事で大事で仕方がない宝物のような思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

(………わたしはもう、ひとりぼっちなんかじゃない。わたしのことを愛してくれる旦那さまが、わたしのことを誰よりも守ろうとしてくれる兄さんが、わたしとはるくんの命を救ってくれている小鳥遊先生がついている。ずっとずっとひとりだと思い込んで、焦っていた日々はもうお終いです)

 ゆっくりと閉じていた瞳を開けた結菜は、大所帯で結菜たちがいる市役所の奥の方の席とは正反対の入り口にいる男に視線を向けた。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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