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番外編② (3)

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▫︎◇▫︎

 花嫁さんの着るウエディングドレスのように美しい真っ白なレースのワンピースを着せられた結菜は、今日限定で小鳥遊のレンタルしているリムジンに揺られながら、目を白黒させていた。

(え、えぇ?)

 声を上げたり表情を大きく変化させることはないものの、顔色が異常なまでに悪い陽翔を気遣いながら、結菜はずっとどうしていいかわからない状況を抱えていた。

「………綺麗だ」

 挙げ句の果てには陽翔が意味の分からないことを呟くのを聞きながら、結菜は遠い瞳をした。

(これは何を聞いても何を言っても、誰も何も聞いてくれませんね)

 諦め方を知っている人間が諦めの境地へと至るのは存外早い。故に、結菜はあっという間にきっぱりさっぱりすっきり諦めるということに成功した。

 それから3時間、つわりによってイライラとしがちな結菜と体調不良によって何度も嘔吐する陽翔を気遣い、多くの休憩をとりながら進んだ一行は、とある農村へと到着した。

「ここは………、」

 結菜はあたりを見回し、大きく首を傾げた。

「………結菜たちが住む場所からある程度遠く、それでいて自家用プロペラ機の着陸が不可能な村だ。ここなら、あの男に気づかれたとしても僅かながらに錯乱することができる」

 唯斗がようやく発した言葉に目を見開いた結菜は、僅かに見えた希望に顔を一瞬輝かせたが、やがて兄の表情が固いことに気がつき、すぐに状況の良くなさを悟った。

「………この作戦の要はお前たちの体調だ。頑張ってくれよ?」

 僅かに必死さを滲ませる唯斗に、結菜はこくりと唾を飲み込む。

「悪いけど、もう後戻りはできない。ごめん、ゆな。勝手な行動をとって」

 陽翔に後ろから抱きつかれた結菜は、彼の声が震え、心臓の脈が早鐘を打っていることに気づく。

「………来てしまったものは仕方がありません。早く婚姻届を提出し、………………逃亡作戦に移りましょう。兄さん、守備はいかほどですか?」

 一瞬にして周囲を才女と言わしめた表情になった結菜に、唯斗はあっけに取られたあと、落ち着いて返事をする。

「………すまんがあと10分だ」
「………………馬鹿ですか?」
「まあまあ落ち着いて。唯斗くんだけが悪いのではなくて、君たちの体調を測り損ねた僕にも責任があるわけなんだから」
「………………ひとまず動きましょう」

 キッパリと言った結菜は顔色が悪いながらも、しっかりと1人で立てるぐらいにまでは復活した陽翔と手を繋ぎ、唯斗に案内されながら市役所へと向かう。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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