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41 欲深い願い
しおりを挟む「そろそろ次に行くぞ」
「次、ですか?」
カラオケの個室の中で無事にソフトクリームを食べ切った結菜は、彼の言葉に目をぱちぱちとさせた。
「………ボーリング、行かないのか?」
ゆっくり3秒彼の言葉を飲み込んで、そして意味することを理解して結菜は必死に彼に訴える。
「い、行きます!行きたいです!!」
「ふっ、そんなに必死にならなくても連れて行ってやる」
ぽんぽんと頭を撫でられて、なんだかふわふわ幸せな気分になってしまう。それが、感情が残っていることへの安堵なのか、はたまた人肌を感じられるという事実への安堵なのかは全く分からない。でも、わからないなりに理解するために、もっと彼と一緒にいたいと思った。
そういうふうに何かを希うのは、結菜にとって初めてに近かった。
“恋”がしたいというのが人生で最初で最後の何事にも変え難い願いだと思っていた。けれど、結菜は今、何よりも、誰よりも、彼と共にいることを願っている。
今、結菜が抱いているのは何よりも強欲で、何よりも叶わない願いだ。結菜はあと4日で結婚しなくてはならない。実家である双葉の分家筋の人間とはいえ、結菜は彼のことを何も知らない。顔どころか名前すらも知らない、血筋と頭脳と学歴だけが優れた人間に嫁がなければならない。
(苦しい………、)
どうしてか胸がぎゅぅーっと痛む。
苦しくて悲しくて逃げ出したくて、でもそう思えば思うほどに苦しくなる。彼のそばにいたいのにいたくない。相反する不思議な気持ちに苛まれながら、結菜はカラオケの個室から彼と手を繋いで外に出る。
(欲深い願いは、この浅ましい願いは、………わたしが持つべきものではありません)
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
引き続きストック切れのため不定期更新になります🙇♀️
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