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35 初めてのポップコーンマシーン

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 彼が手慣れた様子でココアをコップに注ぐのを横目に眺めながら、結菜は近くにあった2つのマシーンを観察した。中に白いお菓子らしきものが入った機械と、レバーがついたドリンクバーの機械とは似ているようでにていない機械だ。

「………気になるか?」
「はい。これはなんですか?」
「ポップコーンマシーンとソフトクリームマシーンだ」
「これがポップコーン………」

 映画館で食べると聞いたことがあるおやつは実際に見てみると思っていたよりも大きかった。片手いっぱいに握りしめてお口の中に放り込むのがお作法だと聞いたことがあるが、このようなサイズでは片手いっぱいに入れたらお口がリスさんになってしまいそうだ。

「ーーーカラオケの個室に持って入れるが、持っていくか?」
「!! よろしいのですか?」

 明らかに表情を輝かせかけ、けれど咄嗟に落ち着いておっとりした微笑みに変更した結菜は、食べてみたいと無意識のうちに目で訴えかけながら彼に強請る。

「構わない。塩味だが大丈夫か?」
「………夜ちゃんとマッサージをしてから眠れば大丈夫です」
(ーーーあれ?わたし、浮腫みやすい体質だって彼に話したことがありましたっけ?)

 小さい頃から塩分が多いものに弱く、すぐに身体が浮腫んでしまう結菜は、1日に摂取する塩分をできるだけ少なくなるようにしていた。自分でも時々忘れそうになってしまうような細々していることを何故彼は知っているのだろうか。結菜は内心首を傾げながらも、目の前にあるポップコーンマシーンに顔を爛々と輝かせる。

「じゃあ、少しだけ注ぎますね」

 そう言った結菜は、左手にポップコーンを入れる用のお皿、右手にポップコーンを注ぐ用のスコップを握ってふんすふんすと意気込む。そうっとポップコーンマシーンの扉を開けると、むわっとした熱気と共に濃い塩の匂いが鼻に充満する。ジャンクフードらしい濃いめの味付けのようだ。
 結菜はスコップをポップコーンの山の中に入れると、見た目よりもずっとずっと軽いぽわぽわしたポップコーンが、思ったよりもたくさんスコップの中に入ってしまった。
 慌ててどうしようかと悩むが、こういうものは触れたら戻してはいけないと知識的に知っている結菜はどうにでもなれといった心境でお皿にポップコーンを入れた。

「………ちょっとじゃなかったのか?」
「あぅっ、」

 結菜の初めてのポップコーンマシーンは、ものの見事に大失敗だった。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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