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33 初めてのドリンクバー
しおりを挟む彼は結菜の手を確かに握ったまま奥の部屋へと進んでいく。そこは黒と赤に統一された異世界のような空間で、どうやら客1グループにつき小部屋1部屋を貸し出しているらしい。結菜はそんな場所をきょろきょろと見回しながら、駆り立てられる不安を必死に笑顔で取り繕っていた。
ゲームセンターにもガラの悪そうな人たちは多くいた。じゃらじゃらと無駄に太い銀色のネックレスが揺れていたり、タテゥーっぽいものを入れている大人もいた。でも、ここにはなんというか、不良っぽい学生が多いのだ。脱色されて金髪に染められた傷んだ髪の男の子や、日焼けサロンでぴっちり焼いているのであろう小麦色の肌の女の子、シャツのボタンを3つ目まで大胆に開けている男の子………、結菜には遠い世界の人種ばかりで、どうにも気後れしてしまう。
陽翔がいれば怖くないと分かっていても、不安になるなという方が難しい。彼は不思議な機会が5つ並んでいる休憩所のような個室へつながる廊下の中央に結菜を連れていく。
「?」
「………ドリンクバーだ。使ってみたくないか?」
少し意地が悪そうに言われて、結菜は頭の中でかちゃりとピースが嵌まる音を聞いた。
ドリンクバー、それは誰しもが楽しむ悪魔のマシーンであると聞いたことがある。何杯でも飲み放題のジュース。その中身はスーパーなどに売っているあのペットボトルジュースらしい。結菜はきらりと顔を輝かせる。
家では飲むことさえも許されないジャンクフードに値する飲み物。病院内にある自販機で昔はひっそりと買っていたけれど、最近は監視が厳しくなって全くできなくなった楽しみ。そんなのわくわくしないわけがない。
結菜は足早にドリンクバーの機械の前に行って、目を輝かせながらドリンクバーの機械3つの前を行ったり来たりした。
コーヒーやココア、コーンスープなどの温かい飲み物がメインの機械にメロンソーダやレモンスカッシュ、炭酸水などジュースがメインの機械、そしてアッサムやアールグレイ、アップルティーやローズヒップなど紅茶の類がメインの機械。
どれも派手なラベルで紹介されていて興味をそそる。全種類飲んでみたいし、この前本で読んだ混ぜ混ぜというものもやってみたい。けれど、飲み物というのはある程度胃に入る量が決まっている。
なんと言っても、今日はこの後彼が回転寿司なるものに案内してくれるのだから飲みすぎるわけにもいかない。
結菜は悩みに悩んだ末、コップ3分の1にキャラメルラテを入れることにした。
初めてのドリンクバーということもあって悩みに悩んだ結菜だったが、やっぱり好物のキャラメルラテは手放せなかった。
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