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20 初めての間接キス
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結菜は彼に美味しさを伝えようと、自分の分のフラペチーノを飲んでいる陽翔に視線を向けた。
『美味しいね!!』
口を開こうとした瞬間に、記憶の奥深くから唐突に呼び起こされた声に、結菜はぱちぱちと瞬きをする。目の前にはちゃんと現実世界が見えているのに、脳内では違う映像が再生されていた。
実家の大病院の廊下、患者さんやお見舞いに来てくださった方が飲み物を飲めるように用意されている自販機の隣のふかふかなソファーに、小さい頃の結菜と左腕に沢山の点滴を刺している1人の少年が腰掛けている。
結菜の手にはキャラメルラテの缶が、目の前の少年の手にはココアの缶が握られている。『秘密だよ』と互いに言いながら、甘い香りがする飲み物を幸せそうに飲んでいる彼の顔は、逆光でやっぱり見えない。
でも、
「………ココア、本当にお好きですね」
あの時、あの少年になんて言ったのかは、ちゃんと覚えている。
「!!」
「………?」
彼がいきなり驚いた顔をしたのを見て、結菜は首を傾げた。
「ーーー声に、出ていましたか?」
「あー、うん。………にしても、よくこれがココアだって分かったな」
「何となくです」
無意識のうちに呟いてしまった言葉に居心地を悪くしながら、結菜はもじもじと自分のキャラメルマキアートを飲んだ。
「ねえ、一口ちょうだい」
「え、あ、はい」
唐突な彼のお願いに何も考えずに彼にカップを渡した結菜は、彼から代わりに受け取ったカップのストローを見つめながら、カチンと固まった。
「あ、今頃間接キスって気づいた?」
意地悪く妖艶に笑う彼の口元には、結菜のカップのストローがある。
「昨日のあーんの時点で色々あれだから、考える前に飲んじゃいなよ。美味しいよ?」
優しく笑う彼は、先程店に着いてすぐに結菜から返してもらった首にかかっているヘッドホンのずれを直してから、銀色のイヤーカフを触った。
「………い、ぃただきます」
初めての間接キスは、イマイチ味が分からなかった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
『美味しいね!!』
口を開こうとした瞬間に、記憶の奥深くから唐突に呼び起こされた声に、結菜はぱちぱちと瞬きをする。目の前にはちゃんと現実世界が見えているのに、脳内では違う映像が再生されていた。
実家の大病院の廊下、患者さんやお見舞いに来てくださった方が飲み物を飲めるように用意されている自販機の隣のふかふかなソファーに、小さい頃の結菜と左腕に沢山の点滴を刺している1人の少年が腰掛けている。
結菜の手にはキャラメルラテの缶が、目の前の少年の手にはココアの缶が握られている。『秘密だよ』と互いに言いながら、甘い香りがする飲み物を幸せそうに飲んでいる彼の顔は、逆光でやっぱり見えない。
でも、
「………ココア、本当にお好きですね」
あの時、あの少年になんて言ったのかは、ちゃんと覚えている。
「!!」
「………?」
彼がいきなり驚いた顔をしたのを見て、結菜は首を傾げた。
「ーーー声に、出ていましたか?」
「あー、うん。………にしても、よくこれがココアだって分かったな」
「何となくです」
無意識のうちに呟いてしまった言葉に居心地を悪くしながら、結菜はもじもじと自分のキャラメルマキアートを飲んだ。
「ねえ、一口ちょうだい」
「え、あ、はい」
唐突な彼のお願いに何も考えずに彼にカップを渡した結菜は、彼から代わりに受け取ったカップのストローを見つめながら、カチンと固まった。
「あ、今頃間接キスって気づいた?」
意地悪く妖艶に笑う彼の口元には、結菜のカップのストローがある。
「昨日のあーんの時点で色々あれだから、考える前に飲んじゃいなよ。美味しいよ?」
優しく笑う彼は、先程店に着いてすぐに結菜から返してもらった首にかかっているヘッドホンのずれを直してから、銀色のイヤーカフを触った。
「………い、ぃただきます」
初めての間接キスは、イマイチ味が分からなかった。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
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