完 1週間だけ、わたしの彼氏になっていただけませんか? (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛

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17 初めてのデートの約束

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▫︎◇▫︎

 次の日の早朝、誰もいない食卓で結菜はナイフとフォークを使ってフレンチトーストを食べる。
 彩鮮やかなお料理たちも、結菜にとってみればつまらない日常の一コマでしかない。ただただ寂れた、楽しみのない日常の一コマ。

「行って参ります」

 誰も返事はしてくれない。
 結菜の目に映るのは深々と頭を下げたメイドの背中だけ。

 昨夜も、父も母も兄も帰ってはこなかった。
 大きな屋敷に、結菜はいつもひとりだ。

(仕方がありません。全て、わたしが悪いのですから………)

 学校に微笑みを浮かべて登校すると、沢山の人が挨拶をしてくれる。
 下心ばかりの挨拶に微笑みを返し続けるのは疲れる。

「………おはよう、ゆな」
「!!」

 でも、陽翔の優しい挨拶は好きかもしれない。

「おはようございます、はるくん」

 今日は、彼のお名前を間違えずに呼べた。昨日の夜、お布団の中で必死に練習し続けた甲斐があるものだ。

「………今日、放課後空いてる?」
「はい、空いています。というか、秘書を通じて父にお願いして、結婚までずっと自由にしていただきました。………結婚したら、自由なんて存在しなくなるでしょうから」

 思わずふっと笑うと、彼は眉間に皺を寄せた。何が彼を不愉快にしてしまったのか、結菜には分からない。

「………放課後、デートに行こう」
「ーーーよろしいのですか?」
「あぁ、………行きたいところはあるか?」
「………ブックカフェに行ってみたい、です」
「ん、分かった」

 ぽんぽんと頭を撫でられると、結菜はついついいつもと違う笑顔を浮かべてしまう。

「っ、………その笑顔反則」
「?」

 赤らめた顔で口元を押さえた彼は、再びヘッドホンを身につけて先々歩いていく。

「あ、ま、待ってください………!!」

 彼の後ろに続くようにして、結菜は小走りで校舎に入っていく。

 初めてしたデートの約束は、結菜がずっと行ってみたかった『ブックカフェ』に決定した。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈‍⬛🐈

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