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8 初めてのバスケットゲーム
しおりを挟む結菜はお財布からお金を出して、彼がお金を入れる間も無くコインを投入する。彼は不服そうな顔をしていたが、そんなのはお構いなしだ。
払われっぱなしというのは癪に障る。
ーーー3、2、1、スタート!!
2台のゲーム機が同時に音を鳴らしてバスケットボールを複数個ごろごろと勢いよく転がしてくる。結菜はそのボールを手早く拾うと、自由自在に動き回っているゴールに向けてボールを投げた。
放射線状の軌跡を描きながら飛ぶボールは、ゴールの輪っかをくぐり抜ける。
ーーーやったねっ!!
ボールが入るたびに何か言葉を発するようにできているらしいゲーム機の機械的な祝辞を受けながら、結菜はただただ機械作業のようにボールをゴールに入れ続けた。
淡々とした作業が好みの結菜には、こういうゲームの方が性に合っているかもしれない。
ーーー3、2、1、終了!!
ーーーお疲れ様!!
汗によって首元がひんやりする感覚に少し罪悪感を感じながら、結菜は結果が出されるボードに視線を向けた。
少し、否、大分はしゃぎ過ぎたかもしれない。
結菜の点数は22点。
陽翔の点数は18点。
ボードに示された結果は、4点差で結菜の勝利だった。
「!!」
「………ゆな上手すぎない?俺、バスケ得意な方なのに」
「たまたまですよ」
少し不服そうな彼にくすっと笑った結菜は、スマートフォンを取り出してパシャッと写真を撮った。初めてのバスケットゲームにしては、そこそこいい点数ではないだろうか。
ゲームセンターに来て初めて出た満足のいく結果に、結菜はにっこりと微笑みを深めた。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
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