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第1王子
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仄暗いアクアマリンの瞳に映る闇に、ジュリアンヌは微笑む。
そして、彼とよく似た暗い瞳をしたミュリエラに視線を向ける。
「さて、わたくしはこのまま国を出るけれど、最後に何か言いたいことはあるかしら」
ジュリアンヌの問いかけに、薄桃のふわふわとした髪を持つ彼女は、天真爛漫に微笑ん見せた。
「なーんにも!あーでも!結婚式譲ってほしーな!あたしだって女の子だし、結婚式への願望はあるからさ!!」
「そう。では、この式はあなたへの花向けに譲って差し上げましょう」
「ありがとーございます!」
にっこり笑った彼女に微笑み返したジュリアンヌは、用は済んだと言わんばかりにもさったく伸ばしていた髪を綺麗に掻き分けた執事に視線を向ける。
「では参りましょう、アレク。いいえ、“アレクサンドル”さま」
グレーアッシュの髪を掻き分けた彼の容姿に、多くの人間が息を呑む。
アクアマリンの瞳が美しい彼の整った顔立ちが、あまりにも彼らの目の前に立つ愚かな人間とそっくりであったからだ。
「アレクサンドル第1王子殿下………」
誰かのつぶやきを皮切りに、ざわめきが大きくなっていく。
痘痕によって王位継承権を失った神童の名を、ある者は助けを求めるかのように呼び、またある者は恐るかのように呼ぶ。
「あに、うえ………、」
呆然とした声をこぼした双子の弟であるレアンドルに冷たい表情を向けたアレクサンドルは、汚物を見るかのように口を歪める。
「“不敬罪でぶっ殺してやる”だったか?お前、いつからそんな口が聞けるようになったんだ?」
「それは、兄上だって知ら」
「問答無用。私利私欲で民を切り捨てる人間なぞ、王侯貴族には不要だ。疾くと王位を三男のグレンフォードに譲るといい。お前には分不相応だ」
「なっ!そんなこと兄上に言われる謂れなど!!」
「王位継承権を失おうとも、俺は第1王子だ。第2王子であり、無能王子と名高いお前にそんな権限がるのか?そもそも、立太子もしていない人間が王太子を名乗るなど言語道断。結婚式が終わったら冷宮にて頭を冷やしておけ」
「なっ!」
唖然としているレアンドルは、すぐに周囲に助けを求める。
けれど、彼に寄り添う人間はミュリエラ以外誰ひとりとしていない。
「じゃあ、最期まで結婚式をお楽しみくださいませ」
顔色を青くして震えている貴族たちを放って、誰よりも洗練された礼を披露したジュリアンヌとアレクサンドルは花びらの舞う美しいバージンロードを、新郎新婦のように微笑みを振り撒いて歩いていく。
多くの人間がハイヒールと革靴の鳴らす美しいハーモニーにうっとりとしているうちに、この国が誇る2つの最高の頭脳が国を捨ててしまったのだった———。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
そして、彼とよく似た暗い瞳をしたミュリエラに視線を向ける。
「さて、わたくしはこのまま国を出るけれど、最後に何か言いたいことはあるかしら」
ジュリアンヌの問いかけに、薄桃のふわふわとした髪を持つ彼女は、天真爛漫に微笑ん見せた。
「なーんにも!あーでも!結婚式譲ってほしーな!あたしだって女の子だし、結婚式への願望はあるからさ!!」
「そう。では、この式はあなたへの花向けに譲って差し上げましょう」
「ありがとーございます!」
にっこり笑った彼女に微笑み返したジュリアンヌは、用は済んだと言わんばかりにもさったく伸ばしていた髪を綺麗に掻き分けた執事に視線を向ける。
「では参りましょう、アレク。いいえ、“アレクサンドル”さま」
グレーアッシュの髪を掻き分けた彼の容姿に、多くの人間が息を呑む。
アクアマリンの瞳が美しい彼の整った顔立ちが、あまりにも彼らの目の前に立つ愚かな人間とそっくりであったからだ。
「アレクサンドル第1王子殿下………」
誰かのつぶやきを皮切りに、ざわめきが大きくなっていく。
痘痕によって王位継承権を失った神童の名を、ある者は助けを求めるかのように呼び、またある者は恐るかのように呼ぶ。
「あに、うえ………、」
呆然とした声をこぼした双子の弟であるレアンドルに冷たい表情を向けたアレクサンドルは、汚物を見るかのように口を歪める。
「“不敬罪でぶっ殺してやる”だったか?お前、いつからそんな口が聞けるようになったんだ?」
「それは、兄上だって知ら」
「問答無用。私利私欲で民を切り捨てる人間なぞ、王侯貴族には不要だ。疾くと王位を三男のグレンフォードに譲るといい。お前には分不相応だ」
「なっ!そんなこと兄上に言われる謂れなど!!」
「王位継承権を失おうとも、俺は第1王子だ。第2王子であり、無能王子と名高いお前にそんな権限がるのか?そもそも、立太子もしていない人間が王太子を名乗るなど言語道断。結婚式が終わったら冷宮にて頭を冷やしておけ」
「なっ!」
唖然としているレアンドルは、すぐに周囲に助けを求める。
けれど、彼に寄り添う人間はミュリエラ以外誰ひとりとしていない。
「じゃあ、最期まで結婚式をお楽しみくださいませ」
顔色を青くして震えている貴族たちを放って、誰よりも洗練された礼を披露したジュリアンヌとアレクサンドルは花びらの舞う美しいバージンロードを、新郎新婦のように微笑みを振り撒いて歩いていく。
多くの人間がハイヒールと革靴の鳴らす美しいハーモニーにうっとりとしているうちに、この国が誇る2つの最高の頭脳が国を捨ててしまったのだった———。
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