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1章 幸せの花園
67 エレオノーラの望むモノ (2)
しおりを挟む想像していたよりも硬い声が響いた。
王宮にいた頃であったならば、ノアはこんなにも感情が露わになった声を出さなかったであろう。これは、ここに、魔女の庵で生活し始めてから生まれてしまったノアの弱点であり、欠点だ。国王になる際に、捨て去るべきものだ。
———王に大きな感情はいらない。
エレオノーラのイエローの瞳は、黄金の瞳を持つ魔女やリュシエンヌのものよりも輝きは劣るが、それでも、人を惹きつける何かがあって、それはノアの心を震わせる。
———全ての民を正しく導こうなんて思ってはいけない。より多くの国民を守り、愛しみ、導ける方向を目指さなくてはいけない
ぎゅっと握りしめた拳は、今にも震え出しそうで、自分が情けない。
———たとえ、その過程で、何十、何百もの国民が不幸になり、亡くなってしまおうとも、僕にはより多くの国民を守る義務と責務がある。
決意が揺らぎそうになる度に、何度も自分に言い聞かせてきた。
———感情は国民を守る邪魔にしかならない。
ノアの生きる道は、生まれたその瞬間から決まっている。
ノアール・フォン・アイゼン。
アイゼン王国が第1王子にして王太子。
文武両道、眉目秀麗、才色兼備。
人並外れた才能に加え、血の滲む努力の末に手に入れた圧倒的カリスマ性を持つ彼は、王子なるべくして生まれてきた人間だ。王担う以外の生き方なんてない。
「もう1度問う。エレオノーラ嬢、あなたは僕に何を望むんだ」
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