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1章 幸せの花園
67 エレオノーラの望むモノ (1)
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◻︎◇◻︎
「エレオノーラ嬢。少し、時間をもらえるか?」
心に余裕を持てた日の夜更け、リビングの机で針仕事に勤しんでいるエレオノーラの元に、今日の分の勉強を全て終えたノアはやってきた。
幾度か針を刺してしまったのか、エレオノーラの指には痛々しい包帯が巻かれている。
「………———構いませんわよ」
静かに返事をして微笑んだエレオノーラの対面に、ノアはゆっくり腰掛ける。カタンという小さな音が、やけに大きく感じられた。
部屋に流れる静寂こそが、魔法による小さな灯火によって照らされる世界には相応しい。
「………テュルク侯爵は健在か」
「———………………、」
彼女の手は針を動かし、彼女の視線はもうすぐ完成するクローバーへと向かっている。水蓮や黒百合、マリーゴールド、どれも共通点がない植物を混沌と刺し合わせていて、それがまるで彼女の心の中を表しているかのようであった。
刺繍1つ1つをとってみればそれはただの植物でしかない。そのはずなのに、全てを合わせるとそれはゾッとするほどの感情が見て取れる。
「………国王、カイゼン・フォン・アイゼンは妄執に囚われていますわ。まるで荊棘のようなそれは、彼自身だけではなく彼が手にする全て、いいえ、彼が関わる全てを巻き込み、棘を刺し続けております」
彼女はそう言いながら、今し方完成したらクローバーの刺繍を撫で、ゆっくりと瞼を落とす。
ノアは彼女の刺した刺繍へと視線を向けてからくちびるを噛み締めた。
「………知ってるよ。ほんの少し前からね」
リュシエンヌが教えてくれた。
今の、カイゼンが国王に就いてからのアイゼン王国の悲惨さを。無情さを。生き難さを。
「………エレオノーラ嬢、君は僕に———何を望む」
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「エレオノーラ嬢。少し、時間をもらえるか?」
心に余裕を持てた日の夜更け、リビングの机で針仕事に勤しんでいるエレオノーラの元に、今日の分の勉強を全て終えたノアはやってきた。
幾度か針を刺してしまったのか、エレオノーラの指には痛々しい包帯が巻かれている。
「………———構いませんわよ」
静かに返事をして微笑んだエレオノーラの対面に、ノアはゆっくり腰掛ける。カタンという小さな音が、やけに大きく感じられた。
部屋に流れる静寂こそが、魔法による小さな灯火によって照らされる世界には相応しい。
「………テュルク侯爵は健在か」
「———………………、」
彼女の手は針を動かし、彼女の視線はもうすぐ完成するクローバーへと向かっている。水蓮や黒百合、マリーゴールド、どれも共通点がない植物を混沌と刺し合わせていて、それがまるで彼女の心の中を表しているかのようであった。
刺繍1つ1つをとってみればそれはただの植物でしかない。そのはずなのに、全てを合わせるとそれはゾッとするほどの感情が見て取れる。
「………国王、カイゼン・フォン・アイゼンは妄執に囚われていますわ。まるで荊棘のようなそれは、彼自身だけではなく彼が手にする全て、いいえ、彼が関わる全てを巻き込み、棘を刺し続けております」
彼女はそう言いながら、今し方完成したらクローバーの刺繍を撫で、ゆっくりと瞼を落とす。
ノアは彼女の刺した刺繍へと視線を向けてからくちびるを噛み締めた。
「………知ってるよ。ほんの少し前からね」
リュシエンヌが教えてくれた。
今の、カイゼンが国王に就いてからのアイゼン王国の悲惨さを。無情さを。生き難さを。
「………エレオノーラ嬢、君は僕に———何を望む」
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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