永遠を生きる魔女と元王子の使い魔くん 〜永遠を生きる魔女と世界を恨んでいる元王子の初恋は、全世界を敵に回す〜

水鳥楓椛

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1章 幸せの花園

66 毒を喰らわば皿まで? (2)

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 皆が各々挨拶をし、エレオノーラが作った美しく、美味しく、栄養価までにも気を配られている朝食を口にする。賞賛以外浮かばない朝食を食べながら、ノアは心の中に浮かんでは消えゆく劣等感に自らが嫌いになる。
 どうして自分は努力している人間すらも、まともに褒められないのかと嫌になる。

「ノアール殿下?」
「———、なんでもないよ。ただ、………美味しいなって」

 人と囲む食卓の美味しさを、ノアは魔女の庵に来て初めて知った。
 温かい食事のおいしさを初めて知った。

 王宮にいた頃よりもずっとずっと貧しい食事をしているはずなのに、王宮にいた頃よりも食事が美味しい。泣きたいくらいに心が温まる。

「殿下のお口にあったようで何よりですわ」

 勝気な彼女が恥ずかしそうに微笑むのを見て、ノアはパチパチと瞬きを重ねた。
 ここまで喜ぶとは思っても見なかった。

 ———もっと早くに素直なことを口にしておけばよかったか………?

 胸に生まれた小さな罪悪感にチクチクと苛まれながら、ノアは朝食を黙々と食べる。満足そうに、けれど、行儀悪くご飯を食べる魔女を注意するのは、いつのまにかエレオノーラの仕事になっていた。

 息苦しいだけだと思っていたエレオノーラとの生活、けれど、よくよく考えてみれば、悪いことばかりではないのかもしれない。

 魔女との会話によって心に余裕を持つことができたノアは、漠然とそう考えながら、苦笑した。意地を張っていたほんの少し前の自分がバカらしくなった。

 ———毒を喰らわば皿までではないけれど、どうせ一緒に暮らすんだから、ちょっとずつ仲良くなる方が過ごしやすいかもな。

 食後のコーヒーを楽しみつつ、ノアはのんびりと思考を巡らせるのだった。


*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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