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1章 幸せの花園

65 エレオノーラの努力 (1)

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「じゃあ、僕は魔女さまを起こしてくるよ。規則正しい生活を送っていただかないといけないからね」

 エレオノーラを部屋に置き去りにし、ノアは魔女の部屋絵と向かう。慣れきった道のりも、エレオノーラがやって来てからはやたらと重い。

 賢く気高い魔女は、エレオノーラの優秀さに気がついていることだろう。
 いつ捨てられるかも分からないという現状に密かに怯えながらも、ノアは出来うる限りの完璧を心がけ、魔女の部屋を訪れた。

 相変わらず布団の中でぐっすり眠っている魔女を野菜シク起こしたノアは、黄金の美しい瞳に望洋とした光がゆっくりと差し込むのをどこか遠くの世界のことのように眺めながら、くあっと短いあくびをこぼした魔女に微笑みかける。

「おはようございます、魔女さま。今日の朝食もエレオノーラ嬢が作ってくださいましたよ」
「そっかぁ~。じゃあぁ、今日もノアのぉ卵料理はぁ、お預けねぇ」
「———そう、ですね」

 櫛を手に取って、魔女のふわふわもこもこチリチリと芸術的に爆発している髪をゆったりとまとめながら、ノアは苦笑した。

(これから先の日々で、僕が朝ごはんを作る機会がもう1度やってくることなんてあるのかな………?)

 とんでもなく早起きで仕事の早いエレオノーラを頭の無垢に思い描いたノアは、自嘲の吐息をこぼす。

「ノアぁ?」

 目の前にある鏡越しに不思議そうに見つめられたノアは、無言で首を横に振った。

「なんでもありません」

 完璧な笑みだ。
 鏡の奥に映る人間が誰かわからなくなってしまう錯覚を抱いてしまいそうなほどに、仮面のような微笑みは、本当に完璧だった。

 ———まあ、僕もエレオノーラ嬢のことを言えないな。微笑みで本心を覆い隠し、何事もなかったかのように振る舞う。

 自分への苛立ちと魔女への罪悪感に苛まれながら、ノアは悠然と微笑み続ける。


*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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