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1章 幸せの花園
64 5人目の子供 (1)
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2週間前のある日、魔女はまた拾って来た。
1匹の猫と一人の少女を拾って来た。
雨によってずぶ濡れで泥だらけにされてしまった1匹と1人は、ボロボロの姿で、哀愁を誘う装いだった。
だからこそ、ノアは油断した。
足元を掬われてしまった。
「わたくしの名前はエレオノーラ・ラ・テュルク。テュルク侯爵家がひとり娘で、貴女さまの元、筆頭婚約者候補ですわ」
真っ赤な縦ロールの艶やかな髪に、意志の強そうなアーモンド型のイエローの瞳。
所作も、発音も、何もかもが美しい彼女は、ノアよりも2歳年上で、王太子時代に何度も会って話したことがある婚約者候補のひとりだった。
ノアは彼女が苦手で、嫌いだった。
天才と呼ばれる分類の人間である彼女は、『できない側の人間』というものが分からなくて、全ての人が自分と同じようにできると思い込んでいて、わずかにでも劣る場面があると叱責する、そんな人間だった。天才特有の『何故出来ないのかがわからない』そういう態度が、努力をしても出来ない人間を小馬鹿にするかのような態度が、ノアは嫌いだった。
誰よりも正しくあろうと、強くあろうとする姿勢は好ましいし、自分に妥協せず、努力を怠らない点も純粋にすごいと思っていた。
しかし、彼女には思いやりがない。自分が思ったことは何が何でも突き通すし、それが正論であるが故に強く言い返しづらく、でも、彼女が取る強者のみが生き残れるような思想を、ノアはどうしても愛せなかった。とても、苦手だった。
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