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1章 幸せの花園
59 魔法は救いか禍か。 (2)
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ノアは基本的に無知だ。
知っている知識が偏りすぎているのだ。
王子さまとして以前に、人として、あらゆることを知っておかなければならない。
常識を、もっと学ばなければならない。
“王子さま”としてでは学ぶことができなかったことは、今この場で学んでおかなければない。
何故なら、王位簒奪後に王さまとなるであろうノアには学べないことだからだ。
常識はずれの人ばかりが集まってくる魔女の庵で学びたい内容としては、大幅に間違ってしまっているだろう。
けれど、ノアには今この瞬間しか、常識を学ぶ場を持ち合わせていない。
胃がひっくり返るぐらいに吐いて胃を空っぽにしたノアは、やがて美しい1本の鍵を手に握る。
大粒の魔法石に彩られた鍵は、魔女に誕生日プレゼントとしてもらったもの。
鍵に優しく魔力を込めると、目の前にはあの鍵穴が現れる。
脳内に直接語りかけるかのような誘惑の音?声?にノアは従い、鍵穴に魔力を込めた鍵を差し込む。
瞬間、ノアの視界には今見ている光景に勝るとも劣らない雅な風景が映し出される。
幸せだけを詰め込んだかのような甘美な世界。
そこには、ノアの望むものが存在している。
優しい母妃、賢く自らに関心を抱いてくれる父王、元気に微笑んでくれるティアラに、無邪気に笑うフク、そして———、
『ノア!!』
焦茶色のローブですっぽりと全身を隠した、勝ち気な彼女の姿。
「………リュシー、」
魔法が大好きで、魔法に好かれようとして、
そして、
———魔法に愛されすぎた憐れな少女。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
知っている知識が偏りすぎているのだ。
王子さまとして以前に、人として、あらゆることを知っておかなければならない。
常識を、もっと学ばなければならない。
“王子さま”としてでは学ぶことができなかったことは、今この場で学んでおかなければない。
何故なら、王位簒奪後に王さまとなるであろうノアには学べないことだからだ。
常識はずれの人ばかりが集まってくる魔女の庵で学びたい内容としては、大幅に間違ってしまっているだろう。
けれど、ノアには今この瞬間しか、常識を学ぶ場を持ち合わせていない。
胃がひっくり返るぐらいに吐いて胃を空っぽにしたノアは、やがて美しい1本の鍵を手に握る。
大粒の魔法石に彩られた鍵は、魔女に誕生日プレゼントとしてもらったもの。
鍵に優しく魔力を込めると、目の前にはあの鍵穴が現れる。
脳内に直接語りかけるかのような誘惑の音?声?にノアは従い、鍵穴に魔力を込めた鍵を差し込む。
瞬間、ノアの視界には今見ている光景に勝るとも劣らない雅な風景が映し出される。
幸せだけを詰め込んだかのような甘美な世界。
そこには、ノアの望むものが存在している。
優しい母妃、賢く自らに関心を抱いてくれる父王、元気に微笑んでくれるティアラに、無邪気に笑うフク、そして———、
『ノア!!』
焦茶色のローブですっぽりと全身を隠した、勝ち気な彼女の姿。
「………リュシー、」
魔法が大好きで、魔法に好かれようとして、
そして、
———魔法に愛されすぎた憐れな少女。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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