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1章 幸せの花園
54 魔力不足 (2)
しおりを挟む「………魔女さま………………、」
情けない声が出た。
揺れる心を表すかのように自信のない声。
自分のこういうところが、ノアは嫌いだ。
優柔不断で、常に周囲を疑っていて、自分に対して絶対的な自信を抱くことができない。
「ノアぁ、強くなるために必要なものはわかるぅ?」
魔女の投げかけて来た唐突な問いかけに、ノアは大きく首を傾げる。
「………我を曲げることのない強い精神力、どんな大怪我を負おうとも前進し続けることのできる強靭な肉体。そして、どんなに心をズタズタに引き裂く言葉を吐かれても平然と微笑んでいられる豪胆な精神力」
「そうねぇ。それもとぉーっても大事。でもねぇ、それだけじゃないのよぉ?」
魔女の言葉に、魔女の微笑みに、チリチリの銀髪を細長いエルフ耳にかける姿に、ノアはゴクっと唾を飲む。
「強さは表向きだけでもぉ、裏向きだけでもないのぉ。学びなさい、ノアぁ。感じなさい、ノアぁ。その学びが、感じるという感性が、きぃっとノアのことを導いてくれるわぁ」
魔女はいつも不思議で、そして、………ノアの欲しい言葉をくれる。ノアの迷いを祓ってくれる。
不思議でいて蠱惑的な黄金の瞳に見透かされて、触れられたくない心を暴かれているはずなのにも関わらず、ノアはこの現状にとても満足していて、それどころか満たされていると感じてしまっている。
「………ありがとうございます、魔女さま」
他にも言いたい言葉は、思いは、願いは、………多分、たくさんあった。たくさんあったはずなのに、ノアはこれだけしか言葉にできなかった。声に、出せなかった。引っ込み思案で、非社交的。こんな自分を、魔女は受け入れてくれる。穏やかに微笑んみかけてくれる。それが、心の奥底から嬉しくて仕方がない。
「さぁ、魔力の回復のためにたぁっくさん寝ようねぇ」
魔女の言葉に頷いたノアは、魔女とリュシエンヌに見守られながらまた深い眠りについたのだった———。
*************************
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