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1章 幸せの花園

54 魔力不足 (1)

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◻︎◇◻︎

「あ、れ………?」

 刈り取られた意識がぼんやりと、だが、確実に覚醒していく。
 唐突に明るくなった世界に、ノアは眠気まなこをぱちぱちとさせる。

「あらぁ?起きたぁ?おはよぉ、ノアぁ」

 魔女の顔がにょきっと生えて来て、心臓がビクッと怯える。
 起きがけに魔女の美しい容貌を拝むなど、身体への負担が大きすぎる。

「………おはようございます、魔女さま」

 けれど、魔女の1番弟子であるノアは意地と根性で全ての感情を多い隠し、魔女ににっこりと微笑んで挨拶をした。

「………おぇ、」

 魔女の斜め後ろで上げてはいけない声を上げたバカのことは完璧に無視したノアは、首を傾げる。

「さっきまでリビングにいたはずなのですが………、」
「さっきというかぁ、3日ぐらい前ねぇ」
「みっか、………、」

 衝撃的な事実にぽかんと口を開けてしまう。
 一瞬だけ眠って一瞬で起きたような印象だったのだが、あまりにも時間が経っている。

 ———魔法の使用による時差ボケか?

 仮定を立てるには材料が足りず、ノアは大きく首を傾げる。

「ノアはねぇ、激しい魔力不足を起こしたのよぉ」
「魔力、不足………、」

 《魔力不足》とは、体内に存在している魔力が文字通り不足し、体調に異常をきたすことを指す。ノアも厳しい魔法訓練の過程で今までに何度も起こしている。

 けれど、これは根本的に何か異なっているような印象を受けた。
 もっとこう、大事なものが吸い取られているかのような………?

「ノアぁ?」

 魔女はノアが魔道具を使用する前に、ちゃんと副作用、代償について、話をした。魔女は嘘をつけないから、騙すことはあっても絶対に嘘をつかない。

 ———でも、本当なのかな………?

 心の中で生まれた疑心暗鬼は、ムクムクとあっという間に大きくなっていく。
 誰にも信頼を寄せることなんてできなかった王宮で生まれ育ったノアは、そこらへんの考え方が人一倍慎重だ。

 信頼も、信用も、誰にも寄せるものではないと信じて疑っていない。

 でも、心の奥底で本心を持った自分が大きな声をあげて叫び続けるのだ。
 『信じたいっ!!』って。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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