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1章 幸せの花園
49 王子さまだから (1)
しおりを挟むリュシエンヌと一緒にダイブしていたお花畑から起き上がったノアは、彼女と一緒にティアラとフクのお墓に手を合わせてから魔女の待つ家への帰路へとついた。
複雑な獣道を渡る2人の足に迷いはない。
「………ねえ、ノアールは魔女になるつもりなの?」
唐突に告げられた質問に、ノアは首を傾げた。
「いきなりどうしたの?」
「なんとなく聞きたいなって思っただけ」
「そっか。………僕は必要に駆られたら迷わず魔女になるよ。たとえどんな代償を払うことになったとしても、僕は目標のためならばなんでも我慢できるからね。たとえこの命を差し出せと言われたとしても、多分僕は簡単に頷いちゃう」
さあっと駆け上がった風に合わせて星の瞬く夜空に手を伸ばしたノアは、悪戯っ子のような無邪気な笑みを浮かべる。
「僕はね、“王子さま”なんだ。たとえクーデターによって辺境に追いやられたとしても、現国王に殺されかけているとしても、………僕はどうあろうと、“王子さま”なんだ」
まるで自分に言い聞かせるような声音が出た。
ノアはその情けなさ全てを覆い隠すために、にっこり微笑む。
胸がいたい。
こころが苦しい。
本当は逃げ出したくて仕方がないのに、ノアの中に植え付けられた思考がそれを許さない。ノアに“王子さま”であり続けろと言い聞かせてくる。
「僕はずっと人々の“理想”の体現であり続けなければならない。全てを抱き留める慈しみを帯びた穏やか微笑み、人々に安心感を与える優雅でいて力強い仕草、そして、何があろうとも冷静沈着に対応し、全てを守り切る頭脳。………僕は、“王子さま”なんだから」
「———」
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