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1章 幸せの花園
48 本当の願い (2)
しおりを挟む口にしてから瞳を閉じた瞬間、走馬灯のようにティアラやフクと過ごした時間を思い出す。抱いていた違和感が確実なものとなり、背筋が凍りついた。
「リュシエンヌも死んじゃうのかな」
ぽつりと呟いたノアを肯定するかのように、風が一筋吹き抜ける。
「あぁ、やっぱり、この世界って理不尽だ」
ノアの呟きは誰に聞き届けられるでもなく、しっとりと常闇に閉ざされた夜空に吸い込まれていった。
かさかさっ、
草をかき分けるような音が聞こえ、ノアはゆっくりと音の方を向く。
「———リュシエンヌ………、」
一瞬バツが悪くなって身体を硬直させたノアは、けれど、首を横に振って肩をすくめた。
「どうしたの?こんなところに」
瞳を輝かせている彼女に微笑みかけたノアは、彼女が一瞬とても不安そうな雰囲気を纏っていたことを見逃さなかった。
「リュシエンヌ?」
怪訝な声で尋ねても、リュシエンヌは何も返さない。
不安そうな空気を一瞬で霧散させ、彼女はルンルンと花を踏まなように注意を払いながらクルンと回る。
「にしても、本当に綺麗。ここに秘密基地作りたいな………、」
「それ、前にも聞いた」
「え、あ、そう、だっけ………?」
「うん。ここに初めて連れてきた時も言ってた」
「そっか………。そうなんだ………………」
呆然と呟くリュシエンヌは、次の瞬間ぶんぶんとノアの手をぶんぶん振り回す。
「ねぇ、ダンス教えて」
「ダンス?」
「そう。ダンス。あたしをお姫さまにしてほしいの」
無邪気な声に、ノアはクスッと笑う。
「いいよ」
*************************
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