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1章 幸せの花園

43 死に様 (1)

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「ノアールはどうなの?どう死にたい?」

 突然に振られた話題。
 ノアは思わずぱちぱちと瞬きをした。

 ———死。

 頭の中に浮かんで消えていったのは、ノアを苛む悪魔の声。

 父王が、

 母妃が、

 誉高き騎士たちが、

 ティアラが、

 血に塗れた身体でノアに迫ってくる。
 うめき声のような絶叫をあげながら、白目を剥き、ノアの身体を闇の中に引き摺り込もうと服を、腕を、足を、掴んでくる。掴んで、離してくれない。

「ぼく、は………、」

 真っ白に染まった頭が、青白く血の気が引いた頬が、ノアの思考を奪っていく。
 いつ何時も冷静沈着でいなければならないのに、気がつけば闇に飲まれかける。

 そういう時は必ず———、

「ノアぁ」

 鼻腔をくすぐったのは少し苦味のある薬草の香り。
 ふわっと背中から抱きしめられたノアは、身体から要らない力がふっと抜けるのを感じた。

「………魔女さま………………」

 安堵の吐息がこぼれ落ちる。
 心がふっと軽くなって、世界が色付く。

「大丈夫ぅ?ノアぁ」
「だい、じょうぶです………、」

 魔女の腕にぐずぐずと顔を埋めて深呼吸をしたノアは、ゆっくりと思考をまとめてからリュシエンヌに顔を向ける。
 少し歪な笑みを浮かべたノアは、小さく声を上げた。

「僕は、他人に………迷惑をかけずに死にたい。誰の足も引っ張らず、誰にも迷惑をかけず、ただただ、ひっそりとひとりで死にたい」

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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