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1章 幸せの花園

42 天才と秀才 (3)

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「………リュシエンヌは諦めたいのか?」
「っそりゃあ、諦めたくはないけどさ。でも、あたし知ってるんだ。あたしにはできないって。あたしは才能がない。なにをやっても上手にできず、挙句覚えられない人間にものを教えるって意味ある?ないよね。ただの時間の無駄。だからさ、ノアールのためにももうこういうのはやめよ」

 諦めの空気を纏うリュシエンヌに、ノアは大きなため息を吐く。

『良いですか、ノアール殿下。「できないからやめる」というのはただの逃げです。人間はできない生き物なんです。何事も、初めては上手にできないし、失敗ばかりしてしまう。それでこそ人間なのです。できないことを努力することにこそ意味があります。できないからこそ、努力するのです』

 ノアに勉強を教えてくれた先生に言葉を思い出したノアは、覚悟を決めてリュシエンヌに声をかける。

「お前は、目の前に絶対倒せないモンスターが現れた時、どうするんだ?」
「? 急に変な話し出すね。ま、良いけど。………絶対に倒せないモンスターか………」

 顎に手を当てて真面目に考え始めた彼女は、2分ぐらい経ったのちに、やっと口を開いた。

「………戦う、かな。だって、魔法使いだとはいえ子供のあたしが戦うことになるっていうことは、もう結構限界のヤバいラインまで来ちゃってるってわけじゃん?もう勝ち目がないってところまで。逃げたってどうせ死んじゃうのが目に見えてる。ならさ、《英雄》になりたくない?ババーンって命かけて戦って、そんでもって負けたら《勇者》、勝ったら《英雄》って呼ばれるんだよ?なんか素敵じゃない?あたしは、意味のある死にざまが欲しい。誰かのために戦って、誰かのために散っていきたい。………ま、老衰が1番望ましいけどねー」

 にっこり笑った彼女に、ノアは苦笑した。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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