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1章 幸せの花園
40 呼び方と喧嘩腰のふたり (1)
しおりを挟む「で?今度はあたしから質問してもいいかしら」
「どうぞぉ~」
リュシエンヌの言葉に、魔女が小さく頷く。
「そこにいる男の子は誰?さっきからものすっごく嫌な予感を振り撒いてる気がするんだけど」
「ん?ノアのことぉ?」
「ノア?その男の子がノアっていう名前なら、“ノアのこと”であってるわね」
リュシエンヌの指名を受けたノアは、ぐつぐつ煮込んだカレーに蓋をしてからリュシエンヌの前に立つ。そこそこの時間冷やしたために、頬にくっきりと浮かんでいた紅葉型の赤い跡は綺麗になくなっている。
「………ノアール・フォン・アイゼン。魔女さまの元で魔法訓練を受けてる《永遠の魔女》唯一の弟子だ」
「へ~、ノアール・フォン………、アイゼン………………。って!王家の名前じゃないの!!」
「あぁ。僕は旧アイゼン王国の第1王子にして、王家最後の生き残りだからね」
「………………えーっと………、ひとまずはご愁傷さま?で合ってるかな」
「………そこは普通恨み言スタートじゃいのか?」
「えー、だって君弱そうだもん。役に立つわけないじゃん」
あまりの言い草にカチンと来ながらも、事実、ノアが何もできていないことが現状であるために、強く出ることができず、結局、ノアは項垂れた。
情けなくて、苦しくて、消えてしまいたい。
王族でありながら公務を放り出し、王子さまとしての勤めさえも果たせなかった自分。
国民の税金によって生かされながら、国民のために返せなかった自分。
全てが生き恥でしかない。
存在そのものが恥であるように感じられる。否、事実恥なのだ。
*************************
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