永遠を生きる魔女と元王子の使い魔くん 〜永遠を生きる魔女と世界を恨んでいる元王子の初恋は、全世界を敵に回す〜

1章 幸せの花園

27 フク (1)

「………赤子は、犬猫とは違うのですよ？軽々しく拾ってはいけません」
「そうだねぇ。でも、このまま放っておいたら間違いなく死んじゃうよぉ？ノアはそれでいいのぉ？」

　挑発するかのような笑みを浮かべた魔女の、何もかもを見透かしたかのような黄金の瞳から逃げるためにゆっくりと瞼を閉じたノアは、意識して平静を装った声を出す。
　こういう時、ノアはいつも身を削って受けた王太子教育に感謝することになる。

「………だめです。その人間がたとえ僕を殺しにきた人間であろうとも、全てが僕の大切な民。僕の庇護すべき存在ですましてや赤子は、1人では決して生きることのできない弱い生き物であり、次世代を担う人財。人々が手と手を取り合い、守り切るべきものです」

　ノアの決意の表れとも言える力強い声に、魔女は満足そうに頷いた。

「ひとまずぅ、この子のお名前決めてあげよっかぁ～」

　魔女の言葉を受けて机の上に編みかごごと置かれた赤子をじっと見つめる。
　魔女が雨から庇ったのか、赤子はあまり濡れていなかった。それどころか、きゃきゃっと楽しそうに笑ってノアに手を伸ばして遊んでいた。

　———何にもわかっていないというのは、案外幸せなものなのかもしれないな………。

　無垢で、純粋で、穢れなんて触れたことのないであろう赤子は、ノアなんかには触れてはいけないもののように感じた。

「魔女さまはなんて名前がいいと思いますか？」

　魔女はものすごく真剣に悩み始めた。

　———なんだかとっても素敵なお名前が付けられそうだな。

　この世界の全てと言っても過言ではないほどの多くの本を読み、その知識を蓄え続けている魔女が名付けるとなれば、伝説の英雄や武器のお名前がポンポンと出てきそうだと考えながら、ノアは期待のこもった瞳で魔女を見つめ続けた。

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