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1章 幸せの花園
25 星空と赤子 (3)
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赤子は状況もわからず、ノアの指を引っ張りながらにぱにぱと笑っている。
そんな状況は、昔のノアならば鬱陶しくて憎たらしくて仕方がなかっただろう。
けれど、今のノアは違う。
今のノアは、魔女と自給自足ののびやかな日々を送ることによって自由を得た。心のゆとりを得た。
ティアラとの馬鹿げたことで笑い合う日々に、寛容さを得た。
「僕はノロマは嫌い。自分で自分の道を貫けない人間も嫌い。でも、………守りたくなるような人間は嫌いじゃないんだよ」
掴まれていない方の指でぷくぷくとした赤いほっぺたを突っついたノアは、穏やかな顔で微笑む。
「君のせいで毒気を抜かれちゃったよ。ありがとう」
小さく呟いたノアは、赤子の入っている薄茶の編みかごを持って立ち上がる。
「………魔女さまに怒られちゃうかもな………………、」
———でも、それも悪くないかも。
なんでも許してくれてしまう魔女に、たまには怒られてみたいと不謹慎なことを考えながら、ノアは走ってきた道をゆっくりと歩いて帰る。
行きしにはなかった腕の中にある程よい命の重さは、存外ノアの心にグッサリと刺さった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
そんな状況は、昔のノアならば鬱陶しくて憎たらしくて仕方がなかっただろう。
けれど、今のノアは違う。
今のノアは、魔女と自給自足ののびやかな日々を送ることによって自由を得た。心のゆとりを得た。
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なんでも許してくれてしまう魔女に、たまには怒られてみたいと不謹慎なことを考えながら、ノアは走ってきた道をゆっくりと歩いて帰る。
行きしにはなかった腕の中にある程よい命の重さは、存外ノアの心にグッサリと刺さった。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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