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1章 幸せの花園

24 崩れ去ったもの (1)

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▫︎◇▫︎

 いつも起きてくる時間に、ティアラが起きてこなかった。

 昨日の今日であるが故に、ティアラの部屋を覗かなかった。

 それが失敗だった。

「死後3時間ってところだねぇ」

 のびやかな魔女の声に僅かに哀愁が滲む。

 胸を一突きに刺して死んだのであろうティアラは、とても健やかな表情をしていた。死んでいる人間だなんて信じられない。
 美しいプラチナブロンドはしゃらりと首に流れていて、身につけている服はノアがプレゼントしたもの。

 ———きれいだ………、

 自分で死化粧まで施しているティアラは、まるでそこで幸せな夢を見ているかのような、否、愛する両親の元で幸せな夢を見ているのだろう。

 1歩、また1歩とティアラの元に無表情で近いたノアは、ふらりとティアラの眠る鮮血に汚れたベッドの側に膝をつく。

『後悔をしない生き方をしてください。自分のやりたいことを貫き通すのです。中途半端が、1番格好悪い』

 何故あの時、ティアラにあんな言葉を投げかけてしまったのだろうか。

『………わたくしにもできるでしょうか』
『できますよ』

 何故あの時、できると言ってしまったのだろうか。

 ———どうして、僕は貫けと、そうでないと生きる意味なんてないと言ってしまったのだろうか。

 分からない。
 分かりたくもない。

 ノアには“その生き方”しかないのに、その生き方が間違いであると分かったら、ノアの生きる道は無くなってしまう。
 ノアの縋る場所がなくなってしまう。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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