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1章 幸せの花園

19 ティアラ (2)

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 白金の美しいストレートな髪は肩上で乱雑に切り裂かれながらも、その美しさを損なうことなくさらさらと揺れていて、髪から僅かに覗くアクアマリンの瞳も宝石のようだ。
 血の通った人間を久方ぶりに見るノアにとって、陶器のように滑らかな頬が恥ずかしげに薔薇色に染まっているのもまた刺激的だった。

「えっと、あの、………あ、ありがとう。ノアくん」

 はにかむように魔女の後ろからノアに話しかける少女に、ノアは僅かに身体を緊張させて微笑む。

「———いえ、どういたしまして」
「あれあれぇ、ノアって面食いぃ?」

 いじるようにノアの頬を突っついてにたにたと笑う魔女に、ノアはブスッと頬を膨らませる。

「………魔女さまは一旦黙ってもらって良いですか?」
「えぇー、扱い酷くなぁい?」
「ひどくありません」

 おろおろとしている少女に優しく微笑みかけたノアは、彼女を怯えさせないように殊更優しく話しかける。

 ———穏やかに、ゆっくりと、ていねいに、

「僕の名前は“ノア”と言います。あなたのお名前をお伺いしても?」
「………………ら、」
「?」
「………ちあら、」

 もじもじと言葉を発する少女に、ノアは確認のために一応名前を口に出す。

「チアラお嬢さまですか?」

 ノアの言葉に、少女はぶんぶんと首を横に振った。

「てぃ、ティアラ………、」

 宝石を散りばめた高貴な女性の髪飾りを由来とする名前は、とても少女に似合っていた。

「ティアラお嬢さま………、素敵なお名前ですね」
「っ、」

 また魔女の後ろに隠れてしまったティアラに苦笑したノアは、キッチンに向かい食事を再び温め始める。

「ティアラお嬢さまはアレルギーはありますか?」

 ふるふると首を振るティアラに、ノアは頷き温め終えた食事を手にテーブルに戻った。

「ひとまずは腹ごしらえをしてから休みましょう。ご飯はとっても大事なので、好き嫌いなく食べるのですよ。どこぞの魔女さまは毎度毎度、『にんじんを食べたくない、食べたくない』と喚き立てますが、良い子なティアラお嬢さまはちゃんと食べられますよね?」

 にっこりと笑ったノアにこくこくと首振り人形のように首を縦に振ったティアラは、その後ノアの作った料理を恐々と口にし、あまりの美味しさに表情を輝かせ、そしてご飯を食べながら疲れ切って寝落ちしてしまったのだった………。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次話とっても短めです。

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