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1章 幸せの花園
14 ごはん (3)
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最後にスープをお皿によそったノアは、危なっかしい動きでゆらゆらとお皿を揺らしながら、魔女の元にご飯を運ぶ。
かちゃん、
机の上にお皿が載る音が静かなお部屋に優しく響く。
「ふぅ、」
無事に運び終えた安堵に少し表情を緩ませ、ノアは魔女の少し膨れた表情にくすりと笑う。
「魔女さまは僕の作るごはんなら、お残ししないのですよね?」
「そ、それとこれとはねぇ?」
「好き嫌いはダメですよ?」
魔女の視線の先にあるもの、それはミネストローネの中に入っている花形に切られたにんじんだ。
「食べましょう、魔女さま」
「………はぁい」
渋々感が否めない魔女に苦笑したノアは、手を合わせる。
「いただきます」
「ん~、」
のびのびと声を出してからスプーンを鷲掴みにした魔女に、ノアは顔を顰める。
「………魔女さまもちゃんと挨拶をしてください。あと、スプーンの握り方はこうです」
ビシッと自らの手を指差したノアに、魔女はぶぅっとくちびるを尖らせる。
「いいじゃないのぉ?ここにはノアとわたししかいないのよぉ?」
「マナーは1日にしてならず、です。いつ何時も完璧なお作法をする為には、それが普通になるまでやり続けなければならないのです。癖付けてしまえば、それが当たり前になるのですから一切苦痛に感じませんよ?」
「えぇー、」
じとっとした表情をした魔女に、ノアはツンと澄ました表情をする。
「ちゃんと頑張ってください。お作法は身につけて損にならないものの1つだと思いますよ?」
「分かってるけどぉ」
「分かっているのならちゃんとしてください。ほら、にんじんも食べる」
魔女の口に自分のお皿のにんじんを突っ込んだノアは、半泣きで咀嚼している魔女に満足そうに頷く。
「はい次、………はい次、………………はい次!!」
ぱくりぱくりとどんどん食べさせて、魔女が撃沈したところで自分の食事を再開する。
我ながらしっかりとした出来栄えに満足したノアは、全て食べ切ってから満足そうに頷き、席を立つ。
「ごちそうさまでした」
ルンルンと食器を片付けるノアの背中に、無事ににんじんを片付け終え、他の好物を頬張る魔女は刺々しい視線を向ける。
「ノアぁ。好き嫌いはダメだよぉ~?」
「ふふっ、なんのことですか?」
ちゃっかりと魔女に嫌いな食べ物を全て食べさせたノアはにっこりと笑うのだった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
かちゃん、
机の上にお皿が載る音が静かなお部屋に優しく響く。
「ふぅ、」
無事に運び終えた安堵に少し表情を緩ませ、ノアは魔女の少し膨れた表情にくすりと笑う。
「魔女さまは僕の作るごはんなら、お残ししないのですよね?」
「そ、それとこれとはねぇ?」
「好き嫌いはダメですよ?」
魔女の視線の先にあるもの、それはミネストローネの中に入っている花形に切られたにんじんだ。
「食べましょう、魔女さま」
「………はぁい」
渋々感が否めない魔女に苦笑したノアは、手を合わせる。
「いただきます」
「ん~、」
のびのびと声を出してからスプーンを鷲掴みにした魔女に、ノアは顔を顰める。
「………魔女さまもちゃんと挨拶をしてください。あと、スプーンの握り方はこうです」
ビシッと自らの手を指差したノアに、魔女はぶぅっとくちびるを尖らせる。
「いいじゃないのぉ?ここにはノアとわたししかいないのよぉ?」
「マナーは1日にしてならず、です。いつ何時も完璧なお作法をする為には、それが普通になるまでやり続けなければならないのです。癖付けてしまえば、それが当たり前になるのですから一切苦痛に感じませんよ?」
「えぇー、」
じとっとした表情をした魔女に、ノアはツンと澄ました表情をする。
「ちゃんと頑張ってください。お作法は身につけて損にならないものの1つだと思いますよ?」
「分かってるけどぉ」
「分かっているのならちゃんとしてください。ほら、にんじんも食べる」
魔女の口に自分のお皿のにんじんを突っ込んだノアは、半泣きで咀嚼している魔女に満足そうに頷く。
「はい次、………はい次、………………はい次!!」
ぱくりぱくりとどんどん食べさせて、魔女が撃沈したところで自分の食事を再開する。
我ながらしっかりとした出来栄えに満足したノアは、全て食べ切ってから満足そうに頷き、席を立つ。
「ごちそうさまでした」
ルンルンと食器を片付けるノアの背中に、無事ににんじんを片付け終え、他の好物を頬張る魔女は刺々しい視線を向ける。
「ノアぁ。好き嫌いはダメだよぉ~?」
「ふふっ、なんのことですか?」
ちゃっかりと魔女に嫌いな食べ物を全て食べさせたノアはにっこりと笑うのだった。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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