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1章 幸せの花園
9 休息 (1)
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いつのまにか終えていた拭き掃除に息を吐いたノアは、荒屋の近くの木になっていた木の実を口にしながら、木陰で魔女と共に休息を取る。
「本当に保存食じゃなくていいのぉ?あっちの方が栄養価が高いでしょうぅ?」
「け、結構です」
むしゃむしゃとりんごを齧りながら、切り株に座ったノアは、引き攣った笑みを浮かべる。
「………………魔女さまはどうしてここに暮らしているのですか?」
「どうしてだと思うぅ?」
「———………人と、………人と関わりたくない、とかでしょうか」
「半分あたりでぇ、半分不正解」
「?」
頬杖をついて遠くを見つめる魔女の横顔は、とてもさびしそうで、ノアはきゅっとくちびるを結んだ。
誰にも触れられたくない領域は誰でも、魔女でも存在しているだろうに、今のノアはとても不躾で無遠慮だった。踏み込んではいけない、踏み込まれたくない領域に土足で踏み込む行為だった
「………ごめんなさい」
「? なにがぁ?」
魔女が心底不思議そうに問うてくるために、ノアは戸惑う。
「聞かれたくないことを聞いてしまって、ごめんなさい」
まっすぐと魔女の黄金の吊り目を見つめていると、数秒間キョトンとした表情をしていた魔女は、ぶふっと思いっきり吹き出して笑い始めた。
「………?」
「んー、ごめんねぇ。ちょぉーっと面白くってねぇ」
ひぃひぃ言いながら笑う魔女が笑い止むのを待ちながら、ノアはじっと美しき魔女を見つめる。
紫のリップのくちびるがゆっくりと開くのに合わせて、ノアは真面目な顔を魔女に向ける。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「本当に保存食じゃなくていいのぉ?あっちの方が栄養価が高いでしょうぅ?」
「け、結構です」
むしゃむしゃとりんごを齧りながら、切り株に座ったノアは、引き攣った笑みを浮かべる。
「………………魔女さまはどうしてここに暮らしているのですか?」
「どうしてだと思うぅ?」
「———………人と、………人と関わりたくない、とかでしょうか」
「半分あたりでぇ、半分不正解」
「?」
頬杖をついて遠くを見つめる魔女の横顔は、とてもさびしそうで、ノアはきゅっとくちびるを結んだ。
誰にも触れられたくない領域は誰でも、魔女でも存在しているだろうに、今のノアはとても不躾で無遠慮だった。踏み込んではいけない、踏み込まれたくない領域に土足で踏み込む行為だった
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魔女が心底不思議そうに問うてくるために、ノアは戸惑う。
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「………?」
「んー、ごめんねぇ。ちょぉーっと面白くってねぇ」
ひぃひぃ言いながら笑う魔女が笑い止むのを待ちながら、ノアはじっと美しき魔女を見つめる。
紫のリップのくちびるがゆっくりと開くのに合わせて、ノアは真面目な顔を魔女に向ける。
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