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1章 幸せの花園
8 続・大掃除!! (3)
しおりを挟む「魔法だよぉ~。今度ノアにも教えてあげようねぇ」
「………僕にも、できるのですか?」
にいぃっと目元を細めて笑った魔女は、その紫のリップが特徴的なくちびるに尖った爪の指を当て艶やかに微笑む。
「素質はあるわよぉ。『永遠の魔女』であるこのわたしがぁ、ちゃぁーんと、保証してあげるわぁ」
妖艶な笑みに、魔法は決してノアの踏み込んではいけない領域であることをひっそりと悟りながらも、ノアは魔女の言葉に厳かに頷く。
———魔法は、僕にとって大きな武器になる。
ノアが睡眠時間と己自身を削って身につけたものは、知識も、剣も、武術も、話術も、叛逆が起こったあの日、ノアを助けてはくれなかった。
生き残るために知らず知らずのうちには使っていたかもしれない。
そもそも何も考えなくても反射的に使えるレベルにまでに身体に叩き込んでいるのだから、使えていない方がおかしい。
しかしながら、ノアが自らの身体に叩き込んだスキルは決して決定打にはならなかった。
それどころか、教えられた常識がノアの足枷になることの方が多かった。
“王子として”何が正しいのかなんて、生き残る場には必要がなかった。あの時のノアにとって最も必要だったもの、それは圧倒的な———力だ。
桶に雑巾を入れて硬く絞ったノアは、そのまま壁を拭き始める。埃や木屑、蜘蛛の巣はしっかりと取り除かれていたが、やっぱり壁や棚にはたくさんの虫食いが存在していた。
魔女が魔法で布を使って荒屋内を拭く傍ら、ノアはいくつかの知識を頭の中で回転させる。
壁や床を拭いていると、なんだか心までもが綺麗に拭われていくような心地がした。
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