永遠を生きる魔女と元王子の使い魔くん 〜永遠を生きる魔女と世界を恨んでいる元王子の初恋は、全世界を敵に回す〜

水鳥楓椛

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1章 幸せの花園

7 目覚め (3)

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「………?」
「おはよぉ」
「………おはよう、ございます」

 ごしごしと目元を擦ったノアは、あたりをくるっと見回した。
 そこは埃だらけの荒屋の中だった。ぎゅっと瞳を擦っていない方の手で布団を握り込むと、ごわっとした感触がした。見下ろしてみるとどこには毛羽だった布地は。どうやらノアは、そこそこ薄汚れた布を幾重にも重ねた場所で寝かされていたようだ。

 ノアのそばには1人の美しき魔女が座っていた。
 安堵しているかのような表情をした魔女は、ノアの額にそのひんやりとした手のひらを触れさせる。

「熱は完全に下がったねぇ」

 額を触れるために挙げられた前髪を手櫛で治されながら、ノアはぼーっとする頭でもう1度周囲を見回す。
 部屋の中はノアが清掃のためにものを全て出したためか何もなく、魔女の横には1つの桶と調薬の道具が並べられていた。

「マジョ、サマ………」

 喉が渇いているせいかガラガラとした声がこぼれ落ちる。

「あららぁ、お水足りていなかったかしらぁ?」

 ノアの身体を起こすために背中に手を入れた魔女は、ゆっくりと上半身をあげさせる。口元に差し出されたコップは優しく傾けられ、ノアの口の中にはひんやりとした甘みのある水が流し込まれる。

「!?」
「果実水よぉ。飲んだことないぃ?」

 うんうんと頷いたノアは、少し隈が薄くなった目元を輝かせ、こっくりこっくりと果実水を飲み干す。

 ———王妃殿下が好きだって言っていた果実水は、こんなにも美味しいものだったんだ………!!

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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