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1章 幸せの花園

5 傷の手当てとご飯と (4)

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「ノアぁ?」
「………なんでもない、です」
「そっかぁ~」

 魔女はのほほんと笑うと、ごろんがしゃんという音を立てながら荒屋の中を歩き回り、何かを手にして帰ってきた。

「200年ぐらい前にぃ旅人にもらった保存食よぉ~。まだ新しいしぃ、これなら食べられるんじゃないかしらぁ?」

 ———200年………、

 ノアは貰った缶詰の古さに若干引きながらも、とりあえず開けてみる。
 剣術の野営訓練の時に1度だけ口にした缶詰の構造を思い出しながら開けてみると、中からは想像通りの腐った香りが漂っている。

「………………」

 ———これは、魔女さまに僕に課した試練なのかもしれない。

 王宮の中で籠の中の鳥のように育てられたノアだけれども、人が動く時にはそれ相応の理由を必要としていることぐらいはちゃんと知っているし、目的があることも知っている。

 魔女は多分ノアにこう言っているのだ。
 『この腐ったご飯を平気で食べられるのなら、わたしの巣に居候させてあげるぅ~』と。

 意地が悪いし下手したら死ぬような試験なあたり魔女らしいが、ノアにとっては好都合だった。逆に恵まれすぎた条件である方がノアにとっては恐ろしい。
 目的を持ってしてノアを育てるのならば、よほどのことがない限りノアの事を見捨てないだろう。けれど、暇つぶしなどの一時の気の迷いでひろわれたのならば、ノアは多分、あっという間に捨てられてしまう。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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