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1章 幸せの花園
5 傷の手当てとご飯と (1)
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「とりあえずはぁ、怪我の手当てが最初かなぁ?」
魔女に導かれるままに真っ暗な荒屋の中に入ったノアは、近くにあった山積みの本の上に座らされた。
『本は先人の心であるために絶対に粗末に扱ってはいけない。敬意を持って接するように』と教わっていたノアにとって、本の上に座るという行為は驚きと罪悪感を伴うものだった。
ならば普通に椅子に腰変えればいいと思うが、残念。
このお家、ノアの想像と観察から見て多分椅子という物が存在していない。
魔女はばんざいをするようにジェスチャーをされたノアは、大人しく魔女の言葉に従う。
パサッという軽い音と共に、上半身からパジャマが抜き取られた。ズボンを上の方に捲り上げられながら、ノアは昨日までは真っ白だった肌が赤黒い血で汚れているのをどこか遠い出来事のように感じた。
「うわぁ、痛そぉ」
魔女の軽い言葉にこれが現実の出来事であることへの実感を僅かに持ったノアは、しなやかに筋肉のついた身体に散らばる傷跡にぐりぐりとアルコールを含ませた脱脂綿を当てられる感触に顔を顰め、これが現実であることへの実感を強めた。
『痛そう』と言いながらも、魔女はノアに手加減をしてくれない。
脱脂綿を当てる不慣れな手つきは危なっかしいのに加え、力加減というものを知らないらしい。傷口を抉られるような感触は多分、本当に傷口を抉られている。
「あれれぇ?血が出てきちゃったわぁ」
呑気な言葉に、ノアは無になることにした。
———これは痛くない。これは痛くない。これは痛くなくない。これは痛くないこれは痛くないこれは痛くないこれは痛くなくい………!!痛い!!
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
魔女に導かれるままに真っ暗な荒屋の中に入ったノアは、近くにあった山積みの本の上に座らされた。
『本は先人の心であるために絶対に粗末に扱ってはいけない。敬意を持って接するように』と教わっていたノアにとって、本の上に座るという行為は驚きと罪悪感を伴うものだった。
ならば普通に椅子に腰変えればいいと思うが、残念。
このお家、ノアの想像と観察から見て多分椅子という物が存在していない。
魔女はばんざいをするようにジェスチャーをされたノアは、大人しく魔女の言葉に従う。
パサッという軽い音と共に、上半身からパジャマが抜き取られた。ズボンを上の方に捲り上げられながら、ノアは昨日までは真っ白だった肌が赤黒い血で汚れているのをどこか遠い出来事のように感じた。
「うわぁ、痛そぉ」
魔女の軽い言葉にこれが現実の出来事であることへの実感を僅かに持ったノアは、しなやかに筋肉のついた身体に散らばる傷跡にぐりぐりとアルコールを含ませた脱脂綿を当てられる感触に顔を顰め、これが現実であることへの実感を強めた。
『痛そう』と言いながらも、魔女はノアに手加減をしてくれない。
脱脂綿を当てる不慣れな手つきは危なっかしいのに加え、力加減というものを知らないらしい。傷口を抉られるような感触は多分、本当に傷口を抉られている。
「あれれぇ?血が出てきちゃったわぁ」
呑気な言葉に、ノアは無になることにした。
———これは痛くない。これは痛くない。これは痛くなくない。これは痛くないこれは痛くないこれは痛くないこれは痛くなくい………!!痛い!!
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