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1章 幸せの花園
2 永遠を生きる魔女 (3)
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———最後に、誰かに抱きしめて欲しいな。
ぎゅっと抱きしめて、ふわふわと頭を撫でて、『偉かったね』、『頑張ったね』、『愛している』と声をかけて欲しい。
『おやすみ』のキスも体験してみたい。
手を繋いでお散歩もしてみたいし、『パパ』、『ママ』と言って、両親に甘えてみたい。
———でも、そんなの、可愛げのない僕には無理なお話だよね。
王子として相応しい人間でいられるように、一生懸命に生きてきた。
人間としての、子供としての自分を押し殺して、人々に求められる姿であろうとした。
そんな苦しい生活の末に行き着く先がこんなものであったとしても、ノアールにはそれしか道がなかった。
選ぶ選択肢なんて持ち合わせていなかった。
がさっ、
大きめな音が響いた次の瞬間、ノアールの視界にはこの世のものとは思えない美しい人が佇んでいた、否、浮かんでいた。
白銀のもこもこチリチリの腰まで伸びた髪、吊り上がった怪しい光を灯す黄金の瞳の周囲には漆黒の蔦を描いたメイクが施されている。
全く光に当たったことがないかのように真っ白な肌と長く尖った耳はその者が『ヒトナラザルモノ』であることを否応なしにも叩きつける。
「あらぁ?どうしたのぉ、坊や」
大きな胸、細くくびれた腰に、大きなヒップ、深くスリットが入った漆黒のドレスに大きな雫型のピアスを身につけた女性は、ふわふわと浮かんだままノアールの方にやってきて、やがて地面に膝をつけて、ノアールに視線を合わせて話しかけてきた。
あまりにも非現実的な出来事に目を見開いて固まってしまったノアールは、そのまま美しい女性に身体を優しく揺さぶられるまで意識をお空の遠くに飛ばしてしまった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
ぎゅっと抱きしめて、ふわふわと頭を撫でて、『偉かったね』、『頑張ったね』、『愛している』と声をかけて欲しい。
『おやすみ』のキスも体験してみたい。
手を繋いでお散歩もしてみたいし、『パパ』、『ママ』と言って、両親に甘えてみたい。
———でも、そんなの、可愛げのない僕には無理なお話だよね。
王子として相応しい人間でいられるように、一生懸命に生きてきた。
人間としての、子供としての自分を押し殺して、人々に求められる姿であろうとした。
そんな苦しい生活の末に行き着く先がこんなものであったとしても、ノアールにはそれしか道がなかった。
選ぶ選択肢なんて持ち合わせていなかった。
がさっ、
大きめな音が響いた次の瞬間、ノアールの視界にはこの世のものとは思えない美しい人が佇んでいた、否、浮かんでいた。
白銀のもこもこチリチリの腰まで伸びた髪、吊り上がった怪しい光を灯す黄金の瞳の周囲には漆黒の蔦を描いたメイクが施されている。
全く光に当たったことがないかのように真っ白な肌と長く尖った耳はその者が『ヒトナラザルモノ』であることを否応なしにも叩きつける。
「あらぁ?どうしたのぉ、坊や」
大きな胸、細くくびれた腰に、大きなヒップ、深くスリットが入った漆黒のドレスに大きな雫型のピアスを身につけた女性は、ふわふわと浮かんだままノアールの方にやってきて、やがて地面に膝をつけて、ノアールに視線を合わせて話しかけてきた。
あまりにも非現実的な出来事に目を見開いて固まってしまったノアールは、そのまま美しい女性に身体を優しく揺さぶられるまで意識をお空の遠くに飛ばしてしまった。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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