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1章 幸せの花園

1 ノアール・フォン・アイゼン (5)

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「おぉ!我がイトシの異母弟おとうとではないか!!助けに来てくれるとはとても気が利く!!」

 空気が読めない父王は嬉しそうな声をあげた。
 でも、ノアールには分かってしまった。

 今回の謀反クーデターの元帥が叔父であることを———。

 漆黒の剣を横に振り血を払った叔父は、涼しい顔で父王とその側に侍る妾?、そして母妃を睨みつけた。

 ———逃げなちゃ、逃げなくちゃ………、

 分かっているのに足が震えて動かない。
 母妃は現状に気がついたのか、ノアールのことを盾にした。ノアールの後ろに隠れて、ぶつぶつと何かを呟いている。

 何を言ったのか、本当は分かっているし、はっきりくっきり聞こえている。
 けれど、ノアールの頭は理解することを拒んだ。

「………あなたが私のことを『愛おしい』と思ったことなど、1度としてなかったでしょうに。愚かですね、義兄上」

 冷たい表情で淡々とした物言いをする叔父は、いつ何時も自他に厳しい人だ。
 ノアールも何度も何度も叱られた思い出がある。

 だからこそ分かる。
 叔父は本当に、心から、この国を案じているのだと。

 たとえその瞳の端に妬みや恨みが滲んでいるのだとしても、叔父はこの国のために動いている。

 それに対してノアールはどうだろうか。

 ———僕は、王子さま失格だ。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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