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1章 幸せの花園
1 ノアール・フォン・アイゼン (3)
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それからノアールは父王と母妃が集まっているという玉座の間へと向かった。
そこには、既に父王と母妃、そして父王が囲っているという十数名の妾?がいた。
誰も何も話さなかった。
6歳とまだ幼さを残すノアールにも、現状は理解できていた。
———謀反が起きたんだ。
胸元に大きなリボンが括られた真っ白なリネンのパジャマの裾をぎゅっと握りしめたノアールは、そこにきて初めて7部丈のズボンを入った足の先に何も身につけていないことに気がつく。
どうやら自分が思っているよりも、ノアールの気は動転しているらしい。
激しい鐘の音と、叫び声、そして金物が擦れ合う音がノアールの耳に響く。
鼻腔をくすぐるのは錆びた鉄の匂い。
何十、何百人もに人に命が失われていくのを、耳で、鼻で、感じ取る。
この状況でなお妾?たちと楽しくおしゃべりをしている父王の感覚が、感性が、………分からない。
「………助けて、助けて………」
めそめそと部屋の端っこで泣いている母妃がノアールの目に映った。
ノアールは数年ぶりに近くに寄ること叶った母妃の方に、ふらりふらりと近づく。
———今なら王妃殿下も、僕のことを………、
弱りきった相手に入り込み、付け入ることは簡単だと学んだ。
同時に、弱りきった相手に付け入ることは悪いことであると学んだ。
でも、ノアールには、これしか方法はないと思った。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
そこには、既に父王と母妃、そして父王が囲っているという十数名の妾?がいた。
誰も何も話さなかった。
6歳とまだ幼さを残すノアールにも、現状は理解できていた。
———謀反が起きたんだ。
胸元に大きなリボンが括られた真っ白なリネンのパジャマの裾をぎゅっと握りしめたノアールは、そこにきて初めて7部丈のズボンを入った足の先に何も身につけていないことに気がつく。
どうやら自分が思っているよりも、ノアールの気は動転しているらしい。
激しい鐘の音と、叫び声、そして金物が擦れ合う音がノアールの耳に響く。
鼻腔をくすぐるのは錆びた鉄の匂い。
何十、何百人もに人に命が失われていくのを、耳で、鼻で、感じ取る。
この状況でなお妾?たちと楽しくおしゃべりをしている父王の感覚が、感性が、………分からない。
「………助けて、助けて………」
めそめそと部屋の端っこで泣いている母妃がノアールの目に映った。
ノアールは数年ぶりに近くに寄ること叶った母妃の方に、ふらりふらりと近づく。
———今なら王妃殿下も、僕のことを………、
弱りきった相手に入り込み、付け入ることは簡単だと学んだ。
同時に、弱りきった相手に付け入ることは悪いことであると学んだ。
でも、ノアールには、これしか方法はないと思った。
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