3 / 180
1章 幸せの花園
1 ノアール・フォン・アイゼン (2)
しおりを挟む
今日もいつも通りの生活が流れていく。
太陽が昇る前から起床して、お勉強をして、走り込んで、剣を習って、お勉強をして、ダンスを習って、お勉強をして、大臣との会談に参加して………、1秒単位で刻まれた過密スケジュールに慣れきってしまったのはいつのことだっただろうか。
夜の12の刻を過ぎたあたりで、やっと今日の分のスケジュールを終えたノアールには、これから明日の予習が待っている。
「………あと、ちょっと………………、」
うとうとする眼をゴシゴシと擦りながら、目の下を真っ黒に染めたノアールは若葉色の濁った瞳で帝王学の教本を読み込む。
———眠い、辛い、苦しい、さびしい。
父王に『よくやった』と言って頭を撫でて欲しい。
母妃に『愛してる』と言って抱きしめてほしい。
———僕の人生はそれだけで、たったそれだけで満たされる。
迫り来る眠気によって霞む視界で、ノアールは必死にペンを握る。
———頑張らなくちゃ。だって僕は、………王子さまなのだから。
ぱちんという音を立てて両頬を軽く叩いたノアールは、もう1度本に向かい、教本を頭の中に叩き込む。
「敵襲!!敵襲ーッ!!」
ゴンゴンという大きな鐘の音と共に怒声が耳を振るわせる。
震える両手で身体を抱きしめたノアールは、真っ白なパジャマの上に手触りの良い群青チェックのカシミヤストールを羽織り、部屋の外に出る。
「あ、あの………、」
部屋の前で番をしている衛兵は険しい顔をしている。
「………警備の関係上、国王陛下と王妃殿下と共に固まって動いていただこうと思います。構いませんか?」
「大丈夫、です」
漆黒のふわふわとした髪から覗く若葉のような瞳を不安にゆらめかせながらも、ノアールは毅然とした態度を保つ。
周囲はそれだけで、僅かながらも安堵を抱くことができることを、ノアールは習っているからだ。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
太陽が昇る前から起床して、お勉強をして、走り込んで、剣を習って、お勉強をして、ダンスを習って、お勉強をして、大臣との会談に参加して………、1秒単位で刻まれた過密スケジュールに慣れきってしまったのはいつのことだっただろうか。
夜の12の刻を過ぎたあたりで、やっと今日の分のスケジュールを終えたノアールには、これから明日の予習が待っている。
「………あと、ちょっと………………、」
うとうとする眼をゴシゴシと擦りながら、目の下を真っ黒に染めたノアールは若葉色の濁った瞳で帝王学の教本を読み込む。
———眠い、辛い、苦しい、さびしい。
父王に『よくやった』と言って頭を撫でて欲しい。
母妃に『愛してる』と言って抱きしめてほしい。
———僕の人生はそれだけで、たったそれだけで満たされる。
迫り来る眠気によって霞む視界で、ノアールは必死にペンを握る。
———頑張らなくちゃ。だって僕は、………王子さまなのだから。
ぱちんという音を立てて両頬を軽く叩いたノアールは、もう1度本に向かい、教本を頭の中に叩き込む。
「敵襲!!敵襲ーッ!!」
ゴンゴンという大きな鐘の音と共に怒声が耳を振るわせる。
震える両手で身体を抱きしめたノアールは、真っ白なパジャマの上に手触りの良い群青チェックのカシミヤストールを羽織り、部屋の外に出る。
「あ、あの………、」
部屋の前で番をしている衛兵は険しい顔をしている。
「………警備の関係上、国王陛下と王妃殿下と共に固まって動いていただこうと思います。構いませんか?」
「大丈夫、です」
漆黒のふわふわとした髪から覗く若葉のような瞳を不安にゆらめかせながらも、ノアールは毅然とした態度を保つ。
周囲はそれだけで、僅かながらも安堵を抱くことができることを、ノアールは習っているからだ。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
「神造生体兵器 ハーネイト」 二人の英雄王伝説
トッキー
ファンタジー
「それは、運命に向き合い立ち向かう、女神に叛逆する神造生体兵器と人間たちの物語」
絶対創造神である女神ソラが作った二人の超生命体が、彼女の人理消滅計画を阻止するため手を組み「神への叛逆(世界管理権の奪取)」に挑む!魔法探偵&解決屋を営む謎多き神造生体兵器と、微生物で構築された体を持つ魔人王によるファンタジーバトル小説!
地球と同じ時間軸を共有する異世界「フォーミッド」
その世界は2次元と3次元の境界に存在し、異世界から転移現象に巻き込まれた者たちが集う場所、そしてその境界における交差点とも呼ばれる重要な領域である。誰もが転移をする際にこの世界を一旦通り抜けて別の世界に移動しているという。
そこにあるアクシミデロと言う地球型惑星に、有名な魔法探偵&解決屋「ハーネイト・ルシルクルフ・レーヴァテイン」と言う人物が名を馳せていた。
かつて古代超文明が栄え、その末にこの星に起きた人的災害「大消滅」により文明が衰退したこの世界で、彼は自身の出生や謎を追い求めながら多くの偉業を成し遂げ、多くの命を守護してきたという。
そんな彼が、ある時事務所に来た異星からの来客者により戦争屋の宇宙人「DG」と戦うことになる。それと同時期に発生した大国のクーデター事件。脱出した国王、家臣らの依頼を受け、新たな仲間、そして旧友たちとも力を合わせ「ハーネイト遊撃隊」として事態の解決にあたることになる。
そして、かつて刃を交えた不滅の菌魔王「サルモネラ・エンテリカ・ヴァルドラウン」との再会、霊量士、天界人との出会いが彼の運命を大きく変えることになり、自身が追い求めていた力と出生の正体に気づくのであった。
それこそがフォーミッド界にて実在する、世界創成を司るヴィダール・ティクス神話の最高女神「ソラ・ヴィシャナティクス」との長い闘いの幕開けになることは誰も知る由がなかった。女神は人間を失敗作、イレギュラーな存在として排除しようとする。ハーネイトと伯爵は彼女の計画を阻止するため、彼女から世界管理権を奪うため戦いを挑むのであった。

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる