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1章 幸せの花園
1 ノアール・フォン・アイゼン (1)
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▫︎◇▫︎
ノアール・フォン・アイゼンはアイゼン王国の第1王子として生を受けた。
———人々は僕を幸せ者だと言った。
家柄に、財力に、智力に、運動神経に、顔立ちに、そして何より将来手に入れるであろうモノに恵まれている、ノアールを幸せ者だと言った。
———けれど、僕は本当に幸せ者なのだろうか。
父王はノアールに無関心だった。
たくさんの妾?に構うのに精一杯で、1度もノアールのことを見てくれたことなんてない。
みんなは父王はノアールのことをちゃんと愛してくれていると言っていたし、ノアールのことをちゃんと気にかけてくれていると言っていたが、そんなものは嘘と偽りに塗れていることぐらい、しっかりと理解している。
母妃はノアールのことを憎んでいた。
ノアールが生まれて自分が美しくなくなってしまったために、父王は母妃のことをいないものとして扱うようになったからだそうだ。
みんなはあんな無能な女は捨ておけという。
けれど、どんなに憎まれようとも、どんなに嫌われようとも、あの人がノアールの母親であることには変わりない。だから、母妃に見てもらえるように、愛されるように、たくさんの努力を積んだ。
でも、母妃は決してノアールのことを見てはくれなかった。
ノアールの周囲にはノアールに媚びを売る人間か、僕に殊更厳しく接する人間しかいない。
誰もノアールそのものを見てくれないし、ノアールを通して違うモノを見つめている。
それが大層憎くて、悔しくて、苦しかった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
ノアール・フォン・アイゼンはアイゼン王国の第1王子として生を受けた。
———人々は僕を幸せ者だと言った。
家柄に、財力に、智力に、運動神経に、顔立ちに、そして何より将来手に入れるであろうモノに恵まれている、ノアールを幸せ者だと言った。
———けれど、僕は本当に幸せ者なのだろうか。
父王はノアールに無関心だった。
たくさんの妾?に構うのに精一杯で、1度もノアールのことを見てくれたことなんてない。
みんなは父王はノアールのことをちゃんと愛してくれていると言っていたし、ノアールのことをちゃんと気にかけてくれていると言っていたが、そんなものは嘘と偽りに塗れていることぐらい、しっかりと理解している。
母妃はノアールのことを憎んでいた。
ノアールが生まれて自分が美しくなくなってしまったために、父王は母妃のことをいないものとして扱うようになったからだそうだ。
みんなはあんな無能な女は捨ておけという。
けれど、どんなに憎まれようとも、どんなに嫌われようとも、あの人がノアールの母親であることには変わりない。だから、母妃に見てもらえるように、愛されるように、たくさんの努力を積んだ。
でも、母妃は決してノアールのことを見てはくれなかった。
ノアールの周囲にはノアールに媚びを売る人間か、僕に殊更厳しく接する人間しかいない。
誰もノアールそのものを見てくれないし、ノアールを通して違うモノを見つめている。
それが大層憎くて、悔しくて、苦しかった。
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