完 婚約破棄の瞬間に100回ループした悪役令嬢、おせっかいしたら王子に溺愛されかけた為、推しと共に逃亡いたします。

水鳥楓椛

文字の大きさ
上 下
15 / 16

15

しおりを挟む
「美味しいご飯三食とお菓子、美しいドレスに装飾品、あとはふかふかのベッドとお昼寝のお時間も欲しいですわ」
「そんなことで良いのならば、今すぐにでも叶えよう」

 真摯な声で頷かれ、まっすぐな瞳に射抜かれる。

「最後にっ、」

 ビシッと彼に向けて指差したヴァイオレットは、今にも泣き出しそうな震える声で、言葉を紡ぐ。

「………わたくしを愛し、そして今すぐにわたくしと共に逃亡してくださいまし」
「あぁ、分かった」

 ふわっとした浮遊感と共に、ヴァイオレットの身体は彼によって姫抱きにされた。

「!?」
「さぁ、我が妻ヴァイオレット。ハネムーンに向かおうではないか」
「いやああああぁぁぁぁ!!レットぢゃんおいでがにゃいじぇえええぇぇぇぇ!!」
「推しの声が聞こえないから。ディー君は黙って」

 姫抱きにドキドキしながらも、オタク根性丸出しのヴァイオレットはきらきらとした視線をディアブロに向け、ディートリヒに冷たい声を浴びせた。

「そもそも、わたくしに嫉妬させようとは20世紀分ぐらい早いですわ。わたくし、おこちゃまは眼中にありませんの。それではご機嫌よう、ディー君。マリーナさま、日本という国をご存知のようでしたら、今度わたくし宛てにお手紙を飛ばしてくださいませ。あと、殿下のことをしっかりと守ってくださいな」

 ばいばいと手を振った瞬間、ヴァイオレットの視界は真っ白に染まり、くちびるに淡く優しい感覚が触れた。幸せな感触は永遠の時を刻むかのように長く優しく続く。

(100回のループの末にあるのが推しとの逃避行ならば、100回もの人生をかけて死に続けた甲斐があったものだわ)

 捻くれ溺愛王子から逃げ出したヴァイオレットは、ハネムーンへと向かう道中、自分を抱きしめ甘やかしてくれる推しに頬を緩めた。

*************************

最後までお付き合いいただきありがとうございました🐈🐈🐈
次話、キャラクタープロフィールを更新して完結になります。
番外編等のご依頼を受け付けようと思いますので、ご希望の方は感想欄からお知らせください!!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

処理中です...