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9 間違いだらけの悪事

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「?」

 目の前のアルゴノートさまが何やら叫んでいるが、それらの罵詈雑言を私の耳に入らないようにしてくれているのだろうか。

「やっぱりノエルは優しいね」

 ぽつりと呟くと、彼が驚いたように私の耳から手を離す。

「えぇーっと、なんだっけ………。あ、そうそう。ここまで読んだんだった。僕の愛しのチェルシーの教科書を破って飲み込んだり、階段からチェルシーを突き落とそうとしてしたり、ドレスを破こうとハサミで指を切り落としたり………、ん?なんか文章がおかしくないか?」

 アルゴノートさまの言葉を聞きながら、私は呆れた顔をしてしまう。

「ねえ、ノエル。私の感覚が間違っていなかったら、アルゴノートさまはもう5分以上あのカンペを読み続けていなかったかしら?」
「………読んでたな」
「ねえ、私の商売道具、無事よね?」

 目元にキスを落とされながら頷かれ、私はげんなりとしてしまった。

「なんであんなに酷い文章なのに、平然としていられるのかな」
「バカだからだろう」

 ばっさりと切り捨てたノエルにほっぺたにキスを落とされながら、私は頬を赤くして頷く。

「そう、かもしれないわね」
「いや、絶対そうでしょ」

 私が曖昧に頷いた言葉にガッツリ大きく頷いたチェルシー。

(うん。あなたは逆ハーエンドをクリアした、モテモテヒロインじゃなかったの?ヒロイン、それでいいの?というか、ヒドイン?)

 ぷっくりと愛らしいくちびるから紡がれる毒舌に苦笑した私は、ぐしゃぐしゃに握りつぶしたカンペを上に放り投げ、それが頭に直撃し、怒り狂って地団駄を踏み始めたアルゴノートさまを見つめる。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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感想 68

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