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「次は?次は?」

 わくわくとしているリリアーナの声に、表情に、貴族たちは唖然とする。
 国の精鋭揃いたる騎士団が一瞬で壊滅した状況に、自らが最弱だと罵っていた少女の纏う圧倒的な覇気に、腰が砕ける。

「では、僕が行かせてもらおうか」

 戦闘で気分が高揚しているリリアーナの耳を通ったのは、見知らぬ涼やかな声。
 嫌悪も恐怖も感じられない穏やかな声は、家族以外からは感じたことのない温かな音色をしていた。

 人垣を掻き分け現れたのは、身長百八十センチ越えの少し小柄な細身の男性。
 漆黒の猫っ毛を半分だけ撫で上げ、琥珀の切れ長の瞳に穏やかな色を宿している男性の頭上には耳が乗っておらず、一瞬だけ首を傾げたリリアーナは、顔の横側についた皮膚と同じ色の楕円の耳に手をポンと打った。

「外交官の………!ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございませんわ。ご生憎様、少々ることが立て込んでおりましたので………、」

 申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら優雅に足を引き、腰をゆっくりと落としたリリアーナは、ふわっと愛らしい微笑みを浮かべた。シャラリと揺れる純白の髪の上では、銀とアクアマリンで彩られた豪奢なティアラとお花畑のように飾られたネモフィラが美しく輝いていた。

「獣王国の三大公爵家が一つ、ポーラーベア公爵家が娘、リリアーナと申します。以後、お見知りおきを」

 ちょっぴり地の滲んでいるドレスと血に濡れている髪、そして赤く染まったグローブで満面の笑みを浮かべているリリアーナに、外交官の男はうっとりと微笑む。

「レイモンド王国が第3王子、外交官を勤めているルフェーブル・レイモンドです。お麗しい姫君、あなたと踊る権利を僕にいただけませんか?」

 たくさんの屍が積み上がっているダンスホールの中央で跪いたルフェーブルに、リリアーナはぽっと頬を赤く染め上げた。心から求めてくれていると分かる声の響きに、リリアーナの心はぽわぽわと浮つく。

「はい!!」

 かっこいい男性にダンスを申し込まれて、嬉しくないわけがない。

(あんな大っ嫌いな男と婚約を我慢していたご褒美がこんっなにも素敵なものだったなんて!!)

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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