完 恋は花火とともに

水鳥楓椛

文字の大きさ
上 下
7 / 7

エピローグ 4月18日

しおりを挟む

 夏が終わって秋が始まって、冬が終わったと思えば春が来る。
 巡り巡る季節の中で、俺はただただ流されるままに日々を過ごして、大学への進学が決まった。
 俺の未来は、彼女と一緒に生きると決めた時には既に決まっていた。

『研究医』

 医学部への入学のために勉強に勉強を重ねた俺は、有名大学の医学部に楽々に入学できる学力にまで登っていた。
 だからこそ、医学部に無事入学した俺は勉学に日々を費やす。彼女と揃いのペンダントは未だに俺の首に健在だ。
 彼女の患っていた病を治す手段を得るために、俺と同じような思いをする人を一人でも減らすために、そんな高尚な心意気はないけれど、俺はずっとずっと彼女のためだけに彼女が死んで尚勉強し続ける。彼女を愛し続ける。

 パカっとペンダントを開けば、中には2枚の写真が入っている。
 1枚は向日葵畑で撮った最後の写真。
 もう1枚は、俺と彼女が付き合うことになった日の写真。
 どちらも俺にとって宝物で、蓋を閉じたペンダントをぎゅっと握り締める。

「晴~!さっさと行くぞ!!俺がじじいに叱られる」
「今行く!」

 一緒に医学部に入った渚とともに、国家試験に合格するために俺はこれから講義を受けに行く。

 桜舞い散る美しい春。
 出会いと別れを運んでくる春。

 俺が大嫌いな春は、逆に彼女が大好きな季節で、どうにもそれが憎たらしい俺は、空から舞い落ちてきた花びらを五枚握りしめると渚とともに大学の中を闊歩するのだった。

*****************

最後までお読みいただきありがとうございました🐈🐈‍⬛🐈

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

最後の日

天野蒼空
恋愛
最後の朝が来た。私の声は京介に届かない。 それでも何かの拍子に京介が私のことを見つけてくれるんじゃないかと期待して、私は今日までの四日間、京介に声をかけ続けていたのだった。

すれ違いのバレンタイン

神村結美
恋愛
高校2年生の美織は、勇気を出して好きな彼にチョコレートを渡すことにした。直接渡す勇気はなく、彼の机の中に入れた。『好きです』のメッセージを添えて。 机の中のチョコレートに気づいた智は、放課後に美織のところに向かう。 バレンタインの日に起こるプチすれ違いのお話。 ※本編は、前中後編の3話で完結してます。 その後についての番外編もあります。 「小説家になろう」でも投稿しています。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

花火空

こががが
恋愛
夏の花火大会の夜、桜雫いあは人混みの陰の中に、古い友人の姿を見かけた。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ
恋愛
月奈(ユエナ)は恋人と別れたいと思っている。 なぜなら彼はイケメンでやさしくて有能だから。そんな相手は荷が重い。

きっと貴女は、僕のものにはならない

遠堂瑠璃
恋愛
何でだろう。僕の日常に、貴女は居ない。 非日常の中でだけ会える貴女。 僕と貴女は、いつだって帰る場所が違って……。 いつでも貴女を独り占めにしたいのに、貴女は僕とは別の場所に帰っていく。本当は帰したくないんだ、いつだって。 こうして僕の隣で呼吸をしている貴女。ほんの限られた時間だけど、今は僕だけの貴女。今だけは、このまま離れないで。 風に揺れる髪が、触れる程傍に居て……。 19歳大学生と、28歳既婚女性の束の間の恋の結末は。

処理中です...