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12 約束は守って
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「………は?」
アリシアの言葉にヨハンが眉を顰めて首を傾げる。
そんなヨハンの反応を無視して、無表情のままのアリシアは彼の腕を自分の方にぐいっと引っ張った。
次の瞬間、ヨハンの真上にぶら下がっていたシャンデリアがぎいぃっと嫌な音を立て、そして、シャンデリアを支えていたチェーンが切れた。
「ーーーぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ガラスが割れる激しい音を立てながら、王城の中央を飾る大きなシャンデリアがヨハンが先程までいた位置で砕け散る。
毎日のようにアリシアのせいで不運に見舞われているのにも関わらず、いまだに不運に襲われるたびに大きな叫び声をあげて恐れている。怖いのならば、アリシアを捨てればいいのに、彼はアリシアのことを捨て切ってくれない。
「大丈夫なの?ヨハン義兄さま」
「これが大丈夫に見えるか!?(ガラスで君が怪我をしたらどうするんだ!!)」
「怪我はしていないから大丈夫なの」
「そういう問題じゃ、なあああぁぁぁぁぁあああい!!」
きぃんと耳にこだまする叫びに、アリシアは眉を顰める。
「じゃあ、どういう問題なの?」
「こういう問題だよ!こんの!馬鹿義妹!!(君が怪我をしたら、僕はガラス職人を皆殺しにしてしまう)」
彼はもう1度叫び声をあげて、そしてはぁはぁと肩で息をする。
(なんだかとってもお疲れなの)
ヨハンは息を整えるとぐしゃっと髪をかき上げて泣きそうな表情になった。とってもド下手に演技で行っていた意地悪な婚約者の顔は、あっという間に剥がれ落ちる。
「………もう、ーーもう無理だよ、アリシア。僕は君を捨てられない」
今更何を言い出すのだとアリシアは呆れる。
本当は彼の言葉が嬉しいのに、アリシアは眉を顰めて不愉快なふりをした。
「婚約破棄はお約束なの」
「分かってる………。だから僕、考えたんだ」
いまにも泣きそうな顔で追い詰められた表情をする彼に、アリシアは申し訳なく思う。でも、これも全てヨハンのためだと飲み込んだ。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
アリシアの言葉にヨハンが眉を顰めて首を傾げる。
そんなヨハンの反応を無視して、無表情のままのアリシアは彼の腕を自分の方にぐいっと引っ張った。
次の瞬間、ヨハンの真上にぶら下がっていたシャンデリアがぎいぃっと嫌な音を立て、そして、シャンデリアを支えていたチェーンが切れた。
「ーーーぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ガラスが割れる激しい音を立てながら、王城の中央を飾る大きなシャンデリアがヨハンが先程までいた位置で砕け散る。
毎日のようにアリシアのせいで不運に見舞われているのにも関わらず、いまだに不運に襲われるたびに大きな叫び声をあげて恐れている。怖いのならば、アリシアを捨てればいいのに、彼はアリシアのことを捨て切ってくれない。
「大丈夫なの?ヨハン義兄さま」
「これが大丈夫に見えるか!?(ガラスで君が怪我をしたらどうするんだ!!)」
「怪我はしていないから大丈夫なの」
「そういう問題じゃ、なあああぁぁぁぁぁあああい!!」
きぃんと耳にこだまする叫びに、アリシアは眉を顰める。
「じゃあ、どういう問題なの?」
「こういう問題だよ!こんの!馬鹿義妹!!(君が怪我をしたら、僕はガラス職人を皆殺しにしてしまう)」
彼はもう1度叫び声をあげて、そしてはぁはぁと肩で息をする。
(なんだかとってもお疲れなの)
ヨハンは息を整えるとぐしゃっと髪をかき上げて泣きそうな表情になった。とってもド下手に演技で行っていた意地悪な婚約者の顔は、あっという間に剥がれ落ちる。
「………もう、ーーもう無理だよ、アリシア。僕は君を捨てられない」
今更何を言い出すのだとアリシアは呆れる。
本当は彼の言葉が嬉しいのに、アリシアは眉を顰めて不愉快なふりをした。
「婚約破棄はお約束なの」
「分かってる………。だから僕、考えたんだ」
いまにも泣きそうな顔で追い詰められた表情をする彼に、アリシアは申し訳なく思う。でも、これも全てヨハンのためだと飲み込んだ。
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