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4 自己紹介?
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真っ白な蔦模様の壁に暖かな木目調の手すりや装飾品。毛の長いカーペットは裸足で歩いても怪我をしなさそうだ。後宮よりもずっと居心地の良さそうな空間に、アリシアは瞬きする。
「シア?」
「………アリシアなの」
「ん、アリシア。それが君の名前かい?」
「ーーーじじょがつけたの。バカとかアホとかアレとかソレは可哀想だからって。正直どーでもいいの。でも、シアはシアと死んだじじょしかよんじゃダメなの」
「分かった」
あっさり引いたヨハンに眉を無表情を向けたアリシアは、途端に彼に興味を失ったように、再びぼーっとし始めた。
「僕の名前はヨハン・ロア・ラングハイムだ。さっきも言ったが、君、アリシア・ラングハイムの義兄であり婚約者だ」
「………衣食住をしっかりしてくれたらあとはどーでもいいの。興味ないの」
「そうか」
苦笑した彼は、アリシアにことをメイドに預ける。
「足の裏を負傷している。歩かせたくないから悪いが抱いて風呂に連れて行ってやってくれ」
アリシアを抱いたミルクティーっぽい印象を受けるメイドはヨハンの言葉に、丁寧に頷く。
「承知いたしました。いきましょうか、アリシアお嬢さま」
「………………」
メイドは優しく丁寧にアリシアのことを抱っこして背中や頭を優しく撫でる。ぽかぽかとした暖かさがアリシアの眠気を呼び寄せる。
「眠っていて構いませんよ。でも、その間にお風呂に入れてしまいますからね?」
「………好きにすればいいの。どーせシアの意見ははんえいされないの」
投げやりに言ったアリシアの言葉に頷いて、メイドは彼女を寝かしつけるように優しく撫でながらお風呂場へと連れて行く。ある瞬間からふわっと体重が増した彼女は、すやすやと穏やかな寝息を立てている。
夥しい数の傷跡を負っているアリシアの身体は普通の子供の体温と比べてもずっとずっと熱かった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「シア?」
「………アリシアなの」
「ん、アリシア。それが君の名前かい?」
「ーーーじじょがつけたの。バカとかアホとかアレとかソレは可哀想だからって。正直どーでもいいの。でも、シアはシアと死んだじじょしかよんじゃダメなの」
「分かった」
あっさり引いたヨハンに眉を無表情を向けたアリシアは、途端に彼に興味を失ったように、再びぼーっとし始めた。
「僕の名前はヨハン・ロア・ラングハイムだ。さっきも言ったが、君、アリシア・ラングハイムの義兄であり婚約者だ」
「………衣食住をしっかりしてくれたらあとはどーでもいいの。興味ないの」
「そうか」
苦笑した彼は、アリシアにことをメイドに預ける。
「足の裏を負傷している。歩かせたくないから悪いが抱いて風呂に連れて行ってやってくれ」
アリシアを抱いたミルクティーっぽい印象を受けるメイドはヨハンの言葉に、丁寧に頷く。
「承知いたしました。いきましょうか、アリシアお嬢さま」
「………………」
メイドは優しく丁寧にアリシアのことを抱っこして背中や頭を優しく撫でる。ぽかぽかとした暖かさがアリシアの眠気を呼び寄せる。
「眠っていて構いませんよ。でも、その間にお風呂に入れてしまいますからね?」
「………好きにすればいいの。どーせシアの意見ははんえいされないの」
投げやりに言ったアリシアの言葉に頷いて、メイドは彼女を寝かしつけるように優しく撫でながらお風呂場へと連れて行く。ある瞬間からふわっと体重が増した彼女は、すやすやと穏やかな寝息を立てている。
夥しい数の傷跡を負っているアリシアの身体は普通の子供の体温と比べてもずっとずっと熱かった。
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