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プロローグ 婚約破棄?

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「アリシア・ラングハイム!!不幸を呼び寄せる女め!今日という今日はもう限界だ!!君との婚約を破棄する!!」

 この世はアリシアにとっていつも不条理で、いつもいつもアリシアにとって不幸なことが起こる。

「承知いたしましたの、ヨハンさま」

 チョコレート色の艶やかな髪を髪を気だるげに背中に流したアリシアは、パーティー会場の中央で婚約を破棄されてもなお、ピクリとも表情を動かさない。死んでしまったかのような表情にガラス玉のように無機質な垂れ目で琥珀色の瞳、そしてこの世のものとは思えないくらいに美しい顔立ちは不気味なほどに彼女を人形らしく見せる。

「婚約破棄をされても涙ひとつ見せないとは本当に不気味な女だ!!さっさと出ていけ!この不幸王女!!」

 びしっとアリシアを指さした王太子レオンの言葉に、アリシアはぴくっと眉を動かす。

「………不幸王女………………、言いえて妙なの」
「そういうのはどうでもいいから、ササっと出て行ってくれ!!もう限界なんだ!!」
「ちゃんと分かっているの」

 こくっと頷いたアリシアにレオンは安堵を見せる。
 金髪碧眼の美青年が身に着けている白い衣装にはワインやジュース、立食用に用意されているのお肉のソースや野菜のソース、スイーツの生クリームがべっとりついている。

「それにしても、毎度のことながらものすごい汚れ方なの」
「誰のせいだと……!!」
「シアのせいだと思うの」
「分かっているなら、さっさと僕から離れてくれっ!!」

 ーーーりぃん、

「あ、ヨハン、そこに立ったら危ないの」
「………は?」

 アリシアの言葉にヨハンが眉を顰めて首を傾げる。
 そんなヨハンの反応を無視して、無表情のままのアリシアは彼の腕を自分の方にぐいっと引っ張った。
 次の瞬間、ヨハンの真上にぶら下がっていたシャンデリアがぎいぃっと嫌な音を立て、そして、シャンデリアを支えていたチェーンが切れた。

「ーーーぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 ガラスが割れる激しい音を立てながら、王城の中央を飾る大きなシャンデリアがヨハンが先程までいた位置で砕け散る。

「大丈夫なの?ヨハン義兄さま」
「これが大丈夫に見えるか!?」
「怪我はしていないから大丈夫なの」
「そういう問題じゃ、なあああぁぁぁぁぁあああい!!」

 きぃんと耳にこだまする叫びに、アリシアは眉を顰める。

「じゃあ、どういう問題なの?」
「こういう問題だよ!こんの!馬鹿義妹アリシア!!」

 群青150年7月7日、今日も今日とて婚約破棄と不運と罵倒を叫んだ王太子に、周囲はからからと笑ったのだった。

 ちなみに、この婚約破棄騒動は今回でちょうど10度目のことであった。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
本日は1時間後に1話、2時間後にもう1話更新します。
最後までお楽しみいただけると嬉しいです!!

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